Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断10小児領域における超音波検査の役割

(S250)

小児の腎泌尿器超音波検査の基本

Fundamentals of Ultrasonography: Pediatric Urinary Tract

野坂 俊介

Shunsuke NOSAKA

国立成育医療研究センター放射線診療部

Radiology, National Center for Child Health and Development

キーワード :

小児の体格や高い放射線感受性を考慮すると,小児領域における超音波検査の役割は極めて大きいことは理解できる.
超音波検査は,低侵襲,簡便な検査として成人を中心に健診から精査まで広く用いられている.また,超音波検査は,病変の呼吸性移動,周囲臓器との位置関係,血流情報などをリアルタイムに評価できるといった利点がある.一方で超音波検査には,得られる所見が術者の技量に大きく依存するという最大の欠点がある.
演者の施設では,体幹・表在の超音波検査のほとんどを中央化し,臨床検査部に配備された装置で放射線科医と超音波検査士が協同で行っている.中央化した環境では,「臨床各科の医師,特に若手医師にとって超音波検査を実際に行う環境が少なくなる」といった懸念をしばしば耳にする.この懸念には,必要に応じ依頼医に画像をリアルタイムに供覧する,検査の際に依頼医が走査可能な環境を作ることで対応している.また,若手医師の教育にも力を入れている.4年前から内科系レジデント全員が初年度に4週間(初期は3週間)放射線診療部で研修をしている.この研修において超音波検査は,レジデントからの要望から,最も時間を費やすモダリティである.超音波研修では,日常業務同様,腎泌尿器検査の頻度が高い.
腎泌尿器超音波検査は,仰臥位とし,各部を縦および横の2断面で評価することを基本とし,適宜斜位断面を追加している.年齢によっては,検査開始直後に排尿する可能性から,膀胱の評価から開始する.膀胱は,形状,壁の性状,膀胱内腔に関しては尿管口からの尿流ジェット,残渣,さらには膀胱背側の下部尿管を評価する.骨盤腔腹水の評価も行う.女児では,内性器の評価も行う.膀胱内腔が虚脱していれば,検査後半に再度評価することにして腎臓の評価を優先する.
腎臓は後腹膜臓器で,通常は上腹部背側に位置している.右腎は肝右葉に,左腎は脾臓に隣接し,上極は背側やや内側に,下極は腹側やや外側に存在し,両腎を正面からみると「ハの字」となっている.これらの位置関係を念頭に走査する.肋骨弓に平行に走査し,腎臓が最大径となる断面で縦径を計測し,これより外側ならびに内側部分も評価し,全てを記録に残す.この際,実質のエコー輝度ならびに血流,中心高エコーとのエコー輝度の差,占拠性病変の有無など評価する.中心高エコー内に無エコー域を見つけた場合は,水腎症を考慮する.水腎症には,その程度に応じた分類がある(SFU分類).腎盂の拡大の程度に関しては,腎の横断像で腎門部中央での腎盂前後径を計測する.腎盂壁の厚さも重要な観察項目である.仰臥位での評価が困難な場合は斜位から側臥位とし,やや背側から走査すると腎臓が描出しやすくなる.腎の描出が困難な場合は,腎低形成,腎欠損,腎摘出後,異所性腎,といった可能性を考慮する.腎下極描出困難時は,馬蹄腎を考慮する.左右腎臓の大きさの左右差を認めた場合は,腎実質のエコー輝度や菲薄化の有無,年齢に応じた縦断像での縦径の正常値,腎血流などが参考になる.
腎泌尿器超音波検査は体幹・表在超音波検査の基本で,これを習得した後に肝胆道系ならびに消化管の超音波検査といった応用編の習得を推奨する.
良質の超音波画像を提供するには,検査技術の習得はもちろん,検査環境の充実も重要である.一般的に体幹・表在の超音波検査の際,鎮静はしない.体動の抑制には,ビデオ供覧,保護者の同伴,適切な身体抑制(固定)で対応している.