Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断10小児領域における超音波検査の役割

(S249)

小児の消化器超音波検査の基本

Fundamentals of Ultrasonography: Pediatric Abdomen

余田 篤

Atsushi YODEN

大阪医科大学泌尿生殖発達医学講座小児科

Pediatrics, Osaka Medical College

キーワード :

はじめに
小児の腹部疾患の一次スクリーニングとして腹部超音波検査(以下超音波)は有用なimaging modalityであり,聴診器以上に有用な情報が得られる.また,超音波がX線被曝を伴わないことは,成長期であるこどもに影響がなく,成人以上に重要な検査に位置づけられる.
小児の腹部超音波では,観察する対象臓器が成人と比較してより小さなサイズであり,同時に探触子と対象臓器の距離も近くなり,高周波探触子での観察が成人と比較して容易で,より詳細に観察できる.一般に成人より周波数の高い,コンンベックス型プローベを使用することが多い.リニア型プローベでも同様で,検者は被検者の体格に合わせて,周波数や焦点をしばしば変更する.
検者は超音波の感度・特異度が高く,確定診断が可能な疾患,確定診断は困難であるが疾患が示唆される疾患,除外診断が容易な疾患,経過観察に有用な疾患を熟知しておくことが重要である.小児では先天奇形を含めて消化管疾患の割合が多くなる.
確定診断が比較的容易な疾患は,乳児肥厚性幽門狭窄症,腸重積,急性虫垂炎などがある.乳児肥厚性幽門狭窄症や虫垂炎の内科治療では超音波は治療反応性の評価に最適である.腸重積の器質疾患はX線注腸透視より超音波の方が一般に診断しやすく,また,内科治療も超音波下整復が推奨される.まれではあるが中腸軸捻転なども超音波で診断が容易である.中腸軸捻転では上腸間膜動脈の本幹の周囲に上腸間膜静脈,腸間膜,腸管が時計方向に巻き付いて渦巻き状に見られる(whirlpool sign).上腸間膜動脈を中心とするwhirlpool signを認めれば中腸軸捻転と診断される.重複腸管も習熟すれば超音波の診断感度は高い.しかし,Meckel憇室の超音波診断は困難なことが多い.
確定診断は困難であるが,示唆する所見が超音波で得られやすい疾患として,病原性大腸菌による出血性腸炎,Henoch-Schönlein紫斑病(HSP,アレルギー性紫斑病,IgA血管炎),炎症性腸疾患などがある.HSPにおける超音波の意義は第一に虫垂炎などの急性腹症の疑いで開腹術に至ることを回避することである.頻度として十二指腸下行脚から空腸領域で消化管壁の肥厚が観察されることが多い.また,スキップしてより肛門側の小腸や大腸が壁肥厚を呈することもある.
病原性大腸菌による出血性腸炎では第三層を中心とした全大腸の著しい壁肥厚を呈する.腫脹した腸管の短軸像はtarget様に見える.本疾患は虚血性腸炎で全大腸が肥厚することもあるが,この肥厚は右側結腸優位の傾向がある.
先天性胆道閉鎖症の診断においては,Trianguler cord signが有名で感度,特異度は高い.胆道拡張症もほとんどが超音波で診断可能であり,機器の進歩で,胆汁うっ滞による胆管内の蛋白栓などの観察も容易である.膵管胆管合流異常症はいまだ,超音波診断は困難なことが多い.
嚢胞性リンパ管腫では単胞性よりも薄い隔壁を有する多胞性の嚢胞として観察されることが多い.内部エコーは原則として無エコーのことが多いが,感染や出血等を合併するとデブリ様にエコー輝度を持つ.嚢胞壁は消化管の五層構造を有しないことが重複腸管との鑑別である.
その他若年性ポリープなど,比較的日常経験されやすい疾患を中心に自験例を提示する.
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