Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断8リンパ節の超音波診断

(S243)

小児におけるリンパ節の超音波診断

Sonographic diagnosis of lymph nodes in children

余田 篤

Atsushi YODEN

大阪医科大学泌尿生殖発達医学講座小児科

Pediatrics, Osaka Medical College

キーワード :

一般に成人に比較して小児期のリンパ節は体格に比して大きめのことが多い.
したがって,小児期の腹部超音波検査(以下超音波)ではしばしば腫大したリンパ節が観察されることが多い.
腹部のリンパ節の超音波診断で忘れてはならないことは腫大したリンパ節は円形で,腫大していないリンパ節は円盤状である.円盤状のリンパ節の長径を測定して腫大の有無を判断している発表を見受けるが,これは間違いである.腹部のリンパ節,特に腸間膜リンパ節では一般に正常では腹背方向に平坦で,左右方向に長い紡錘型の形状を呈している.正常では短径となる腹背方向のリンパ節の径が,腫大すると球形を呈する.また,当然ではあるが1個のリンパ節のみの腫大が観察されることはまれで,リンパ節腫大は,集族して複数個の腫大したリンパ節として観察される.
腹部のリンパ節は腹腔リンパ節,上腸間膜リンパ節,下腸間膜リンパ節領域に分類される.また,肝十二指腸靱帯内リンパ節,総肝動脈幹後部(前上部)リンパ節などが腹部充実臓器の領域リンパ節として観察されやすい.
腸間膜リンパ節は,右中腹部から右下腹部で結腸領域の腸間膜リンパ節が観察され,左上腹部から左中腹部で小腸領域の腸間膜リンパ節が観察される.したがって,大腸疾患では右側のリンパ節腫大が観察されやすく,小腸疾患では左側で腫大が観察される.また,終末回腸から回盲部では特にリンパ組織が発達しているので腸間膜リンパ節が観察されやすく,虫垂炎を代表として,種々の疾患でリンパ節腫大が観察される.
肝胆道病変では,川崎病,血球貪食症候群,肝炎,硬化性胆管炎などで肝門部のリンパ節腫脹がしばしば観察される.感染性腸炎,炎症性腸疾患,腸重積,IgA血管炎(アレルギー性紫斑病)などでは腸間膜リンパ節腫脹が観察されやすい.また,一般に感染性腸炎でも,ノロやロタウイルスなどのウイルス性腸炎では細菌性腸炎よりも左上腹部の腸間膜リンパ節腫脹が観察されやすい.同時に感染性腸炎では腸間膜リンパ節腫脹は1-2か月で縮小し,正常化するのに対して,クローン病などの慢性腸炎では腸間膜リンパ節腫脹は著しいことが多く,しかも持続してリンパ節腫脹が観察される.
成人と比較して,疾患の種類は限定されるが,超音波による腹部リンパ節腫脹所見が診断の一助となった症例も多く,自験例を中心に提示する.