Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断8リンパ節の超音波診断

(S241)

リンパ節の解剖と病理

Anatomic and histopathologic characterization of lymph node for ultrasonography

中峯 寛和

Hirokazu NAKAMINE

日本バプテスト病院中央検査部

Department of Laboratory Medicine, Japan Baptist Hospital

キーワード :

【はじめに】
リンパ節は「線維性被膜に囲まれ,輸入・輸出リンパ管を併せもつリンパ組織」と定義される.ここでは,超音波検査に有用と思われるリンパ節の解剖と病理所見の概要を述べる.
【リンパ節の解剖】
免疫学的には,リンパ節は二次免疫臓器に分類され,一次臓器(骨髄,胸腺)で抗原非依存性に分化したリンパ球が,抗原依存性に二次分化する場であるが,三次臓器(全身諸臓器,免疫効果器官)としても働く.
肉眼解剖学的には,リンパ節は表在性と深在性とに二分され,前者では頸部,腋窩部,および鼠径部がよく知られる.後者は縦隔,腸間膜・後腹膜,実質臓器の門部・周囲・内部,大〜中血管周囲などに分布する.
組織学的には,リンパ節実質は皮質,傍(副)皮質,および髄質に分けられ,その間を輸入リンパ管から流入したリンパが被膜下洞から髄洞を経て,門部の輸出リンパ管へ流出する.一次臓器で分化したリンパ球は,傍皮質の高内皮細胞小静脈からリンパ節実質に入り,T細胞はこの場で,B細胞は皮質にあるリンパ濾胞に移動しそこで,輸入リンパ管からリンパ節に到達した抗原に暴露されそれぞれ二次分化する.これが完了したリンパ球(記憶細胞あるいは効果細胞)は,輸出リンパ管からリンパ節を出て全身に分布する.リンパ節の構造は基本的には単一であるが,実際には部位によって異なり,例えば腋窩リンパ節の脂肪化,鼠径部リンパ節の線維化,腸間膜リンパ節の洞拡張がある.また,「Scammonの発育曲線」によれば,4歳ころから20歳ころまでは,成人に比べ小児のリンパ組織量が多い(12歳児は,成人のおよそ2倍).
【リンパ節腫大の原因】
リンパ節腫大は反応性(非腫瘍性)と腫瘍性とに二分され,反応性腫大の原因として感染症,自己免疫性疾患,薬剤が知られるが,小児では原因不明のことが多い.
リンパ節に原発する腫瘍の代表はリンパ腫であるが,他に樹状細胞腫瘍,血管・リンパ管性腫瘍,間質細胞腫瘍などもある.一方,リンパ節は外来抗原ばかりでなく内在異物に対するフィルターでもあるため,ほとんどの悪性腫瘍がリンパ節に転移し得る(転移・浸潤頻度の高い腫瘍として癌腫およびリンパ腫・リンパ球性白血病が挙げられる).
【腫大リンパ節の肉眼・ルーペ像パターン】
反応性リンパ節病変は濾胞型,びまん型,洞型,および混合型に分類される.腫瘍の場合は濾胞型(正しくは結節型)とびまん型との2大別に加え,腫瘍の占拠範囲(全体か部分病変か)も重要である.しかし,このようなパターンの違いを超音波検査で捕捉するのは困難かも知れない.一方腫大リンパ節には,前出の“生理学的変化”に加え,リンパ節梗塞や結核性リンパ節炎に代表される壊死,肉芽組織形成・病的線維化などが起こり,これらは超音波検査で捕捉可能と思われる.血流増加の観点から,血管に富む病変として,反応性病変では関節リウマチリンパ節症,反応性・境界領域病変ではCastleman病,腫瘍性病変ではT細胞リンパ腫(特に血管免疫芽球性T細胞リンパ腫),Kaposi肉腫などが挙げられるが,超音波検査で捕捉可能かどうか不明である.
【リンパ節生検の際の注意】
超音波検査でリンパ節腫大が確認された場合の生検適応ついて,幾つか注意点がある.例えば,表在性リンパ節のうち診断価値が最も高いのは頸部リンパ節であり,鼠径部リンパ節は腫大していても必ずしも病的とはみなされない.リンパ節腫大を来す疾患のうちには,生検しないほうがよいと考えられるものもある.
【おわりに】
超音波検査でリンパ節が対象となる頻度が高いのであれば,超音波画像と組織病理像との対比図表を設けておいてもよいように思われる.