Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断7分子基盤に立った超音波の治療応用

(S238)

超音波による機械的刺激の骨芽細胞及び破骨細胞に対する作用:魚のウロコを用いた解析

Effect of mechanical stress by ultrasound stimulation on osteoblasts and osteoclasts: Analysis by an assay system using fish scale as a model of bone

鈴木 信雄1, 北村 敬一郎2, 古澤 之裕3, 田渕 圭章4, 近藤 隆3, 池亀 美華5, 清水 宣明1, 和田 重人6, 服部 淳彦7

Nobuo SUZUKI1, Kei-ichiro KITAMURA2, Yukihiro FURUSAWA3, Yoshiaki TABUCHI4, Takashi KONDO3, Mika IKEGAME5, Nobuaki SHIMIZU1, Shigehito WADA6, Atsuhiko HATTORI7

1金沢大学環日本海域環境研究センター, 2金沢大学医薬保健学域, 3富山大学大学院医学薬学研究部, 4富山大学生命科学先端研究センター, 5岡山大学大学院医歯薬学総合研究科, 6富山大学医学部, 7東京医科歯科大学教養部

1Institute of Nature and Environmental Technology, Kanazawa University, 2College of Medical, Pharmaceutical and Health, Kanazawa University, 3Graduate School of Medicine and Pharmaceutical, University of Toyama, 4Life Science Research Center, University of Toyama, 5Graduate School of Medicine, Dentistry and, Okayama University, 6Faculty of Medicine, University of Toyama, 7College of Liberal Arts and Sciences, Tokyo Medical and Dental University

キーワード :

【目的】
魚類のウロコは,哺乳類の頭蓋骨等の膜性骨に似た組織であり,ハイドロキシアパタイトとI型コラーゲンを主成分とした石灰化基質上に,骨芽細胞と破骨細胞が共存している.魚において,ウロコは体幹骨(主に背骨)よりも機能的なカルシウム(Ca)の貯蔵庫であり,生殖時等のカルシウムが必要な時には,ウロコからカルシウムが供給される.そこで,骨代謝を解析する目的でウロコの評価システムを開発し,このシステムを用いて,カルセミックホルモンが哺乳類と同様に作用することを確認してある.そこで本研究では,骨芽細胞・破骨細胞・骨基質が共存した魚のウロコの培養システム(in vitro)を用い,骨芽細胞及び破骨細胞に対する作用を解析した.
【方法】
材料としてキンギョ(Carassius auratus)を用い,まず骨芽細胞のマーカーである(アルカリフォスファターゼ活性:ALP活性)を指標に超音波の条件設定を行った.その条件に基づいて,骨芽細胞及び破骨細胞に対する作用を解析した.一方我々は,片側のウロコを除去すると,残りのウロコ(ontogenic scale)の骨芽細胞及び破骨細胞の活性が上昇し,3日経過した時が最も高いことを最近見出した.そこでこのウロコ(骨代謝亢進ウロコ)を用いて,超音波刺激による骨芽及び破骨細胞活性への影響を解析した.
【結果】
超音波の強度及び刺激頻度は,60mW/cm2ISATA及び180パルス(50%duty factor at 0.5 Hz)であり,コントロールは室温より3℃高い温度で培養すればよいことがわかった.次にこの条件で,骨芽及び破骨細胞の変化を調べた.その結果,通常のウロコを用いた場合,骨芽細胞の活性は有意に上昇したが,破骨細胞の活性が低く,破骨細胞の活性は変化しなかった.超音波照射により骨芽細胞の活性が上昇したので,骨芽細胞で特異的に発現しているマーカー遺伝子である(insulin-like growth factor-I: IGF-I)やホルモン受容体(estrogen receptor: ER)の遺伝子発現をRT-PCRにより調べた.ERのmRNAレベルは,超音波刺激後,培養3時間では変化しなかったが,18時間では有意に増加した.IGF-IのmRNAレベルは,3時間培養で有意に増加し,18時間培養では有意に変化しなかった.したがって,超音波刺激によりIGF-IのmRNA発現は,ERのmRNA発現よりも早期に起こり,骨芽細胞を活性化していることがわかった.
一方,骨代謝亢進ウロコを用いて,超音波刺激による骨芽及び破骨細胞活性への影響を解析した.その結果,15℃で18時間培養後,骨代謝亢進ウロコの骨芽細胞の活性は4個体中3個体において有意に増加し,破骨細胞の活性は4個体すべてにおいて有意に低下した.
【結論】
魚類のウロコは,超音波刺激に感度よく応答して骨芽細胞を活性化することが判明した.さらに骨代謝が亢進したウロコでは,骨芽細胞の活性が上昇し,破骨細胞の活性が低下することがわかった.現在,臨床にも用いられているLIPUS(1.5 MHz, 30 mW/cm2; SAFHS 4000J,帝人ファーマ社)に対する作用を解析中である.
【参考文献】
(1)Suzuki et al., J.Pineal Res., 45, 229-234(2008)
(2)Suzuki et al., Bone, 48,1186-1193(2011)