Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断6超音波とDDS

(S234)

微小気泡と超音波を利用した遺伝子デリバリーシステムの構築

Development of Gene Delivery System by Bubble Liposome and Ultrasound

小俣 大樹, 鈴木 亮, 小田 雄介, 丸山 一雄

Daiki OMATA, Ryo SUZUKI, Yusuke ODA, Kazuo MARUYAMA

帝京大学薬学部

Faculty of Pharma-science, Teikyo University

キーワード :

【背景・目的】
近年の超音波技術の発展により,超音波診断装置の高解像度化や3D撮像などが可能となっている.また,超音波を数mm単位で患部に対して正確に照射することのできる強力集束超音波が臨床応用され,超音波エネルギーによる前立腺がんや子宮筋腫の低侵襲的治療が行われている.このように超音波は,診断・治療に利用できる外部エネルギーとして注目されている.さらに最近では,超音波と微小気泡(マイクロバブル・ナノバブル)を併用することで,細胞内や組織に対して薬物や遺伝子が効率よく導入されるという超音波技術に注目が集まっている.遺伝子治療の実現には,安全性に優れ,高い遺伝子導入効率が期待できる遺伝子ベクターの開発が望まれている.その中で超音波と微小気泡を利用した遺伝子導入法は圧壊現象(キャビテーション)に伴うジェット流を誘導し,それにより生じた細胞膜の一過性の小孔を介し,遺伝子を細胞内へと効率よく導入させる方法であると報告されている.超音波と微小気泡を利用した遺伝子デリバリーシステムは,エンドサイトーシスを介して遺伝子をデリバリーするシステムとは異なり,瞬時に細胞内へと遺伝子を導入できることに加え,体外から超音波を照射することで,目的組織に対して選択的に遺伝子を送達可能な方法として期待されている.現在,臨床で使用されている微小気泡(超音波造影剤)は診断を目的として開発されたものであり,超音波を利用した遺伝子デリバリーシステムを実現していくためには,効率的かつ安全に遺伝子を導入することのできる微小気泡の開発が必要となる.これまでに我々は,血中安定性,滞留性に優れ,医薬品としても利用されているポリエチレングリコール修飾リポソームに着目し,超音波造影ガス(パーフルオロプロパン)を封入したナノバブル(バブルリポソーム)を開発してきた.そこで本シンポジウムでは,バブルリポソームと超音波を利用した遺伝子デリバリーの可能性について紹介する.
【結果・考察】
バブルリポソームと超音波を利用した組織選択的な遺伝子導入について評価した.バブルリポソームとルシフェラーゼ発現プラスミドDNAをマウス尾静脈から投与し,肝臓に向け体外から超音波を照射したところ,肝臓において遺伝子発現を確認できた.また,脳に対して経頭蓋的に超音波を照射したところ,脳においても遺伝子発現を確認した.このように,バブルリポソームとプラスミドDNAを全身投与し,特定の組織に向け超音波を照射することで,組織選択的に遺伝子導入できることが明らかとなった.次に,治療用遺伝子を用いたバブルリポソームと超音波による遺伝子治療について評価した.マウスのがん組織にInterleukin-12発現プラスドDNAをバブルリポソームと超音波により導入したところ,顕著な腫瘍増殖抑制効果を示した.バブルリポソームと超音波を利用した導入法は遺伝子治療へ応用可能な方法と期待される.
リポソームを微小気泡の殻として利用することで,標的指向性の付与や薬物・遺伝子の封入といった多機能性微小気泡の創製も可能となると考えられる.今後は,遺伝子デリバリーに最適化されたバブル製剤の開発を進め,本技術を使用した遺伝子デリバリーシステムの構築を進めていきたいと考えている.