根岸 洋一¹, 高橋 葉子¹, 小俣 大樹², 鈴木 亮², 丸山 一雄², 新槇 幸彦¹

Yoichi NEGISHI¹, Yoko TAKAHASHI¹, Daiki OMATA², Ryo SUZUKI², Kazuo MARUYAMA², Yukihiko ARAMAKI¹

¹東京薬科大学薬学部, ²帝京大学薬学部

¹Drug Delivery and Molecular Biopharmaceutics, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, ²Drug and Gene Delivery Research, Teikyo University

キーワード :

近年，超音波エネルギーのDDSへの応用が考案され，実際に超音波造影剤であるマイクロバブルと導入核酸・遺伝子の共存下に治療用超音波を照射することでバブルが崩壊し，同時にキャビテーション（衝撃波）が生じ，その駆動力を利用して細胞膜に一過性の小孔を開け，共存する核酸・遺伝子を細胞内へと導入する試みが，基礎研究で成功を収めている．この方法は，超音波照射した部位にのみ効率よく導入可能であり，臓器・組織特異的に核酸・遺伝子導入する方法として期待されている．しかし，これまで報告されているマイクロバブルは，粒子サイズや標的指向性の欠如などの改善すべき課題が残されている．そのような背景から，生体適合性，血中滞留性に優れたポリエチレングリコール修飾リポソームに超音波造影ガスを封入したナノサイズのリポソーム（バブルリポソーム）の開発に成功し，これは，超音波造影剤として機能するのみならず，治療用超音波（1-3 MHz）を併用する低侵襲的な核酸・遺伝子デリバリーツールとして期待される．このバブルリポソームと核酸あるいは遺伝子の混合溶液を局所投与後，投与部位に超音波照射を行うことで，動物組織への導入効果も示してきた．さらに，全身投与に向け，血管内投与後のバブルリポソームと遺伝子の体内挙動の一致，および遺伝子の安定性・滞留性の向上を図った新規バブルリポソーム（正電荷あるいは負電荷脂質を有する）の開発にも成功している．本バブルリポソームは，核酸・遺伝子のみならず，他の負電荷物質や正電荷物質，さらに他の疾患への適用も可能と考えられ，超音波技術との融合による新規診断治療システム（診断と治療を同時に行うセラノスティックス（Theranostics）システム）の開発につながるものと期待される．本講演では，多機能なバブルリポソームを用いた種々の疾患モデル（下肢虚血，筋ジストロフィー等）への局所あるいは全身投与による治療用核酸・遺伝子デリバリーを試みた応用例を紹介させていただく．
【参考論文】
1）Suzuki R, et al., J. Control. Release., 117: 130-136，2007,
2）Negishi Y, et al., J. Control. Release., 132: 124-130，2008,
3）Negishi Y, et al., Mol Pharm., 9:1834-1840，2012,
4）Endo-Takahashi Y, et al., Biomaterials. 34: 2807-2813，2013,
5）Endo-Takahashi Y, et al., Scientific. Reports., 4: 3883，2014,
6）Negishi Y, et al., Mol Pharm. in press