Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断6超音波とDDS

(S233)

細胞選択的遺伝子導入を目的とした超音波応答性糖修飾バブルリポプレックスの開発

Development of an ultrasound-responsive glycosylated bubble lipoplex for cell-selective gene transfer

川上 茂

Shigeru KAWAKAMI

長崎大学医歯薬学総合研究科医療科学専攻展開医療薬学講座医薬品情報学分野

Department of Pharmaceutial Informatics, Graduate School of Biomedical Sciences, Nagasaki University

キーワード :

近年,創薬の領域ではパラダイムシフトが起こり,低分子,タンパク質,さらには遺伝子・核酸を対象とした治療薬の開発が進んでいる.遺伝子・核酸を標的とする組織・細胞内へ高効率に送達法させるドラッグデリバリーシステム(DDS)基盤技術の確立は,遺伝子・核酸医薬品の開発だけでなく,個体レベルの動物実験による遺伝子機能の検証に基づく生命現象の解明,標的遺伝子探索の実現を通じて,医療分野において広く貢献することができる.遺伝子や核酸医薬品は,その特性から機能を発現させるためには,投与部位から標的細胞に至るまでの種々の体内動態過程ならびに標的細胞に到達してから核に至るまでの細胞内動態過程を精密制御する必要がある.我々は,臨床で広く用いられる超音波と超音波造影ガスを封入した糖修飾バブルリポソーム製剤を開発し,体外から超音波照射を行うことで,糖鎖認識に関連するレセプターが高発現するマクロファージへの細胞認識能とバブル崩壊に伴うキャビテーションエネルギーによる細胞穿孔能を利用することで,標的細胞内へ遺伝子やsiRNAを高効率に送達させることに成功した.1-4)また,血管内投与後の負電荷を有する赤血球などの生体成分との相互作用を回避するため,負電荷を示すプラスミドDNA,正電荷を示すカチオン性ポリマー,負電荷を示すアニオン性バブルリポソームから構成され,静電的相互作用により複合体を形成するアニオン性バブルリポポリプレックスの開発を行った.本製剤は,赤血球と相互作用することなく,超音波照射により部位選択的に高い遺伝子発現を示すことを確認した.5)今後,本製剤をプラットフォームとして糖やペプチドなどのリガンド修飾により標的指向性を付与する予定である.
今回の発表では,超音波応答性糖修飾バブルリポプレックスを用いた標的指向型遺伝子・核酸送達システムに関して議論を行いたい.
【参考論文】
1)Biomaterials, 31,7813-7826(2010)
2)Biomaterials, 32,4659-4669(2011)
3)Mol Pharm, 8,543-554(2011)
4)Hepatology, 56,259-269(2012)
5)J Control Release, 176,24-34(2014)