Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断5造影超音波による診療へのインパクト

(S231)

造影超音波検査により可能となった肝細胞癌の微細血流診断

Contrast enhanced ultrasonography enabled detailed blood-flow diagnosis of the Hepatocellular carcinoma

小川 眞広1, 杉山 尚子1, 廣井 喜一1, 古田 武慈1, 後藤 伊織1, 山本 義信1, 石綿 宏敏1, 小野 良樹1, 森山 光彦1, 滝口 好子2

Masahiro OGAWA1, Naoko SUGIYAMA1, Yoshikazu HIROI1, Takeshige FURUTA1, Iori GOTO1, Yoshinobu YAMAMOTO1, Hirotoshi ISHIWATA1, Yoshiki ONO1, Mitsuhiko MORIYAMA1, Yoshiko TAKIGUCHI2

1駿河台日本大学病院消化器肝臓内科, 2駿河台日本大学病院臨床検査部

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Surugadai Nihon University Hospital, 2Division of clinical Laboratory, Surugadai Nihon University Hospital

キーワード :

【目的】
造影超音波検査の有用性いうまでもなく,既に当会でも多くの討論がなされている.現在我が国で唯一使用可能な超音波検査用造影剤sonazoidは肝腫瘤性病変および乳腺領域に対して保険収載が認められている薬剤であるがその有用性は広く他の臓器に対しての有用性もいわれるようになっているのが現状である.今回我々は従来の適応である肝腫瘍性病変についての有用性を再検討し診療へ与えるインパクトについて検討を行ったので報告する.
【対象】
当院でsonazoidを用いた造影超音波検査が施行された肝腫瘍性病変である.組織学的および総合画像診断が施行され臨床的に確定疾患が可能であった肝腫瘍性482病変である.
【方法】
使用造影剤はSonazoid 0.5ml/bodyの静脈内ボーラス投与である.使用装置はGEヘルスケア社製LOGIQ7,S8,E9,使用探触子:3.5c,C,7L,10L.造影超音波検査を以下の手法で行いRaw data保存を行い画像再出力により評価を行った.造影方法は,1.造影modeの1画面表示での撮影,2.reference画像としてのB-mode画像の並列画像表示での撮影,3.過去画像の再出力後並列表示を行った比較撮影,4.磁気センサー対応装置によりCTおよびMRI画像を最大5断面表示までreference画像として選択した撮影,5.注目する腫瘍性病変に撮影部位を限定し,拡大率またはzoom機能を用いて描出範囲絞りその後にFocus pointを1カ所でMI値を0.25前後に調節した撮影である.
【結果】
造影modeのみでは腫瘍濃染像の有無,濃染パターン,血管構築を中心に診断であったがB-modeの並列により腫瘍のどの部分の血流変化なのかの検討も可能となった.超音波検査においてもデータ管理を行う事で比較読影も可能とし,より詳細な血流変化が可能であった.また,磁気センサー対応装置での並列画像は超音波検査を施行しながら総合画像診断を可能とし,超音波検査の分解能の高さを活かした局所の詳細な血流情報を得ることが可能であり,臨床上の有用性を高める結果となった.
【考察】
B-modeの超音波検査のみと比較し造影超音波検査を加味することで超音波診断の確診度が高まり造影超音波検査は有用性が確認された.当初の有用性に加え装置の改良と共に多方面での広がりを見せている.特に近年のRaw data管理や磁気センサー対応装置の出現により超音波の弱点であった客観性の向上を飛躍的に認めた.これにより過去画像の再出力も容易となり,単に検査を施行するのみでは無く,過去画像との比較読影も可能とし,細部にわたる変化を観察する事が可能となり,肝癌における治療効果判定や経過観察症例において有用とあった.空間・時間分解能の高い超音波検査は,鑑別診断のみではなく腫瘍肉眼分類や腫瘍分化度,脈管浸潤の有無などの評価についても言及可能であった.また広範囲の撮影をいかに行う課題は残ったが,磁気センサー対応装置で他画像と併用検査により改善され,多時相を合わせた詳細な画像比較により臨床上の問題点となる関心領域に集中し描出範囲を限定する事によりFR30/秒以上の高時間分解能の撮影も可能とし他の画像診断を凌駕する血流情報が得られる事が確認された.
【結語】
超音波診断装置上で総合画像診断を施行できるようになり,時間・空間分解能の高い超音波診断は十分精密診断となり得ることが証明され,最終診断となり得る臨床的にインパクトの極めて高い検査であると考えられた.