Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断5造影超音波による診療へのインパクト

(S228)

乳腺領域における造影超音波検査の意義

The meaning of the contrast enhanced ultrasound in the Breast

金澤 真作1, 三塚 幸夫2, 齊藤 芙美1, 久保田 伊哉1, 尾作 忠知1, 白神 伸之3, 寺原 敦朗3, 根本 哲夫4, 澁谷 和俊4, 緒方 秀昭1

Shinsaku KANAZAWA1, Yukio MITSUZUKA2, Fumi SAITO1, Yorichica KUBOTA1, Tadatoshi OSAKU1, Nobuyuki SHIRAGA3, Atsurou TERAHARA3, Tetsuo NEMOTO4, Kazutoshi SHIBUYA4, Hideaki OGATA1

1東邦大学医療センター大森病院乳腺・内分泌外科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 3東邦大学医療センター大森病院放射線科, 4東邦大学医療センター大森病院病院病理科

1Depertment of Breast and Endocrine Surgery, Toho University Omori Medical Center, 2Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Omori Medical Center, 3Department of Radiology, Toho University Omori Medical Center, 4Department of Pathology, Toho University Omori Medical Center

キーワード :

【背景】
乳腺超音波による血流評価として我々が利用できるものとしてドプラ法,そして造影超音波検査がある.2012年8月に第2世代超音波造影剤ソナゾイドが乳房腫瘤性病変に適応拡大となり,リアルタイムな検査が可能となった.
【目的】
我々は,院内倫理委員会承認のもと被験者からInformed Consentを得て2007年から乳房造影超音波検査を開始し,ソナゾイドの適応拡大以後は日常臨床として行っている.今回,乳房造影超音波検査が日常臨床もたらした変化を報告する.
【対象】
精査乳房造影超音波検査として,スクリーニング乳房造影超音波検査での有所見症例を対象としている.
【方法】
超音波診断装置とプローブは,Aprio XGとPLT805ATを使用.送信周波数は5.5〜6.5 MHz,Mechanical index(MI)は0.2程度,Dynamic range 40〜45dBとしGainとSTCは適宜調整している.Bモードで詳細な観察を行い,ソナゾイド投与直前からプローブを固定し,造影剤投与後1分間観察と撮像を行い,続いてMicro Flow Imageingなどでの観察と撮像を追加.観察モードは位相変調法を基本とし,最近は振幅変調法を取り入れたモードを用いている.ソナゾイドは規定通りに調整した懸濁液として0.0075 mg/kgを用い,10 mlの生理食塩水にて1 ml/secの速度で静脈内投与している.
【結果】
乳房造影超音波検査の特筆すべきメリットは,それまで造影MRI検査でのみ観察可能であった,病変内外の詳細な血流情報が観察可能となったことであると考える.ドプラ法でも血流情報は観察可能であったが,ドプラ法は血流速度に依存し血流の遅い腫瘍血管内の血流を捉えることが出来なかった.造影超音波検査は血管密度と血管径に依存するため,血流の遅い腫瘍血管内の血流も観察可能であり,血流量の比較も可能である.
日常診療において,血流情報の不可欠な病変の存在,広がり,薬物療法の治療効果のいずれの診断も造影MRI検査により行われている.造影超音波検査は,そのいずれの診断においても造影MRIと同等以上の効果が得られると考えられた.MRIに用いられる造影剤は細胞外液性造影剤であり,末梢の血管から血管外漏出が起き染影が得られる.一方超音波造影剤は微小気泡であり,腫瘍血管からも漏出せず,単純な血管造影剤である.MRI検査は全乳房を俯瞰することが可能である一方,超音波検査はMRI検査より空間分解能が高い.血管造影剤であることで,瘢痕や線維組織など造影MRI検査で病変と間違われやすい病変を造影せず,空間分解能が高いことで病変内部や周囲の微細な血流情報を得ることが出来る.造影MRI検査は多発病変の検出にも有用であるが,超音波検査では見逃される場合もある.しかし,2nd look USに造影超音波検査を行うことで,血流情報を加味した存在診断が可能であり,必ずしも真の病変を指摘しない造影MRIの欠点も補うことが可能である.ただし,造影超音波検査は,血流情報を観察しており,超音波検査と違い必ずしも乳腺組織を観察していないことに注意が必要である.
【まとめ】
造影超音波検査が乳腺領域の日常臨床に与えたインパクトは大きい.ただし,現状では,機器の能力や検査モード,診断方法などのばらつきがあり,今後の改良が期待される.