Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断5造影超音波による診療へのインパクト

(S227)

造影超音波による診療へのインパクト:即日造影超音波検査法の意義

Impact of contrast-enhanced US in the clinical setting

石田 秀明1, 渡部 多佳子2, 小松田 智也1, 八木澤 仁1, 大山 葉子3, 長沼 裕子4, 伊藤 恵子5, 鈴木 克典6, 黒田 聖仁7, 千葉 崇宏8

Hideaki ISHIDA1, Takako WATANABE2, Tomoya KOMATSUDA1, Hitoshi YAGISAWA1, Yoko OHYAMA3, Hiroko NAGANUMA4, Keiko ITOU5, Katunori SUZUKI6, Masahito KURODA7, Takahiro CIBA8

1秋田赤十字病院消化器科, 2秋田赤十字病院臨床検査科, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4市立横手病院消化器科, 5仙北組合総合病院臨床検査科, 6山形県立中央病院消化器科, 7福島赤十字病院消化器科, 8栗原市立栗原中央病院放射線科

1Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Medical Laboratory, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 5Department of Medical Laboratory, Senboku Kumiai General Hostital, 6Department of Gastroenterology, Yamagata Prefectual Central Hospital, 7Department of Gastroenterology, Fukushima Red Cross Hospital, 8Department of Radiology, Kurihara Municipal Central Hospital

キーワード :

造影超音波法は,その優れた血流表示能から現在肝腫瘍診断には不可欠なものとなっている.原発性肝細胞癌のラジオ波治療効果判定が本法の中心的な活用法であるが,肝血管腫や肝限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia:FNH)の診断能も極めて高いことが知られている.一方,造影超音波法はヨードアレルギーや腎不全など,CT検査で造影剤使用が困難な例への使用が有用とされているが,この点に関しても,多数例の検討は実は少ない.我々の施設では“21世紀の医療は機動力医療(今日できることは今日する)というコンセプトで,原則,造影超音波は外来受診当日に施行することとしている.この様な環境の中で,我々の造影超音波検査が臨床に与えるインパクト(日常診療中の意味)について下記の方法で検討し若干の知見を得たので報告する.使用装置:アロカ社製:alpha-10,東芝社製:AplioXG, 500,GE社製Logiq E9,日立アロカ社製 Preirus.超音波造影剤:Sonazoid(第一三共社).なお造影手順は通常の肝腫瘍のそれに準じた.
1)造影超音波検査の対象疾患:我々の施設とその関連施設を合わせると年間約4000件の造影超音波検査を施行している.その対象疾患を最近施行した1000例について検討したところ,a)担癌患者の肝転移検索が482件,と最も多く,b)肝血管腫例が112件と,それに次いだ(そのうち74件はドック超音波でチェックされた肝病変の2次検査のための来院),c)他の検査目的は多種多様(肝膿瘍,胆嚢癌の肝浸潤判定,など)であったが,その中では,まだら脂肪肝例(肝腫瘍の除外目的)が62件,原発性肝細胞癌の診断と治療効果判定が58件,であった.なお,肝血管腫例に関しては,原則的に来院当日造影超音波検査を施行し,造影超音波所見を動画でreplayし簡単に説明しているが,受診者全員がこの即日造影著音波検査に満足していた.
2)CT造影困難例と超音波造影困難例の頻度比較:2011年10月〜2012年9月までの1年間では,CT造影困難例は47例(ヨードアレルギー12例,腎疾患35例)で,超音波造影困難例の3例(卵アレルギー)を大きく上まっていた.なお,CT造影困難例においても造影超音波の診断能は全員良好であったが,6例で肘静脈部で造影剤の漏れがあり再注入が必要であった.造影超音波検査後の体調に問題をきたす例は無かった.
【まとめと考察】
造影超音波の検査目的は施設の特性に大きく依存すると思われる.大規模な大学病院では,集約医療の拠点として,原発性肝細胞癌の診断と治療効果判定目的が検査の主体となると考えられる.しかし,今回の当院の結果が示すように,一般の地方中核病院では,造影超音波検査の主目的は,担癌患者の肝転移検索と肝血管腫の診断確定,である事が多いと思われる.当院ではドック2次検査目的で外来受診当日に“良性腫瘍”を“良性腫瘍である“と受診者に説明できることが造影超音波検査で可能であった.この良性肝腫瘍の高い診断能と(その能力を生かした)即日造影超音波検査の施行こそが一般病院における,造影超音波による診療への最大のインパクトの一つと思われる.他方,ヨードアレルギーや腎疾患などのため造影CT困難例に対しての造影超音波検査の意義に関しては想定通りの結果であり,造影超音波法の安全性が再確認できた.これも造影超音波による診療へのインパクトの一つであり,今後も造影CT困難例に対しては積極的に造影超音波検査を施行すべきと思われる.