Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断5造影超音波による診療へのインパクト

(S227)

次世代の造影技術と造影剤の安全性

Next generation technologies and safety issues in ultrasound contrast agent

工藤 信樹

Nobuki KUDO

北海道大学大学院情報科学研究科

Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University

キーワード :

はじめに
Levovistの登場に伴い超音波造影剤とその画像化技術の開発は急速に進展し,現在では臨床に欠くことのできない診断技術として応用の範囲を広げている.現在,診療の面における主な興味の対象は,新規造影剤の開発や新画像法の提案よりも,新たな臨床的意義の発見にシフトしていると思われる.一方,基礎の面においては,超音波治療における微小気泡の有用性が注目され,診断と治療の両面で微小気泡を活用する研究が注目を集めている.また,造影剤利用の拡大は,造影剤の安全性を再度確認することの必要性も示している.本発表では,これらの2点について概観する.
気泡の診断と治療への応用
診断(diagnostics)と治療(therapy)の融合により必要な部位への効果的な治療を実現するtheranosticsという概念が注目されている.診断と治療の両面で有効性を発揮する微小気泡は,まさにtheranosticsの代表例といえる.標的機能を有する気泡は,治療が必要な部位を画像診断で発見するのに有用である.標的機能は,特定のがん細胞を特異的に認識する抗体やリガンドを微小気泡の表面に付加することにより実現される.また気泡は,集束強力超音波を用いた加熱治療において熱の発生を促進し,ソノポレーションや音響化学治療では,イナーシャルキャビテーションの発生を促進する作用によって治療効果を増強する.また,気泡は薬剤のキャリアとしての活用も有望視されており,免疫療法の実現に向けた樹状細胞への抗体導入も検討されている.
造影剤の安全
造影剤気泡は診断用超音波周波数の共振径に設計されており,診断用の短いパルス超音波の照射下でも音響エネルギーを効率良く吸収して微小気泡は良く膨張・収縮する.診断装置の出力指標であるMechanical Index(MI)は,超音波に共振する気泡が存在する場合に,イナーシャルキャビテーションが生じる可能性の程度を表し,診断装置はこれが生じない音圧範囲で利用されている.最近,音響放射圧を利用して組織の硬さを可視化するARFI(Acoustic Radiation Force Impulse)画像法が開発された.この方法では,従来の診断には用いられなかった長いバースト超音波の照射により組織を変形する音響放射圧を発生する.バースト波照射下で気泡は持続的に成長するため,より低い音圧下でもイナーシャルキャビテーションを生じる可能性が高くなる.それゆえ,ARFI装置の安全性をMIで評価することはできない.また,造影剤気泡は投与後最大24時間体内に残存する可能性が指摘されているので,ARFIを用いる場合には,それ以前の造影剤気泡の使用の有無について十分留意することが推奨されている[1].
1.http://www.jsum.or.jp/committee/m_and_s/acoustic_radiation.html