Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断4ナビゲーションシステムの今

(S225)

AR技術を応用した超音波表示装置の開発 超音波教育から術中ナビゲーションへの応用

The development of in-situ visualization system of ultrasonography using augmented reality: Aplication for education and intraoperative navigation

三木 健司1, 2, 秦 正二郎2, 竹村 信行1, 伊藤 大介2, 照屋 正則2, 上西 紀夫2

Kenji MIKI1, 2, Shojiro HATA2, Nobuyuki TAKEMURA1, Daisuke ITOH2, Masanori TERUYA2, Michio KAMINISHI2

1JR東京総合病院消化器外科, 2公立昭和病院消化器外科

1Department of Gastroenterological Surgery, JR Tokyo General Hospital, 2Department of Gastroenterological Surgery, Showa General Hospital

キーワード :

超音波検査は,任意の位置や角度から断層画像を得ることができるが,術者は,得られた2次元断層画像とプローブの方向や位置関係から,生体内での3次元的な解剖学的構造を頭の中で再構築する必要がある.しかし,画像を映し出すモニターが患者から離れた位置にあるために,体内の3次元的構造を直感的に理解するのが難しい.そこで我々は,AR(拡張現実)技術を応用し,Head mounted display(HMD)を用いて超音波画像を直接患者の体の上に表示するシステムを開発した.システムでは超音波診断装置よりBモード断層画像を,HMDに固定された2つのwebカメラから術者の視点から見た患者体表のステレオ画像をリアルタイムにコンピュータに取り込んだ.超音波プローブと患者体に装着した光学マーカーをwebカメラで認識し,プローブの位置情報を計算してBモードの超音波断層画像を,生体を映し出したステレオ画像に重畳表示した.重畳表示した画像をHMDに表示することにより,あたかも患者の体の中に断層面が立体的にみえるようになった.また,ドップラー画像を用いて血管だけを抽出して,プローブでスキャンした血管構造を3次元表示することもできるようになった.
本システムは,その場に超音波断面が表示されるため,腹部超音波によって肝臓の解剖学的構造を直感的に理解することができる.研修医が腹部超音波を学ぶ際の教育的ツールとして非常に有用である.
また,超音波ガイド下の中心静脈穿刺ナビゲーションとしての応用が期待できる.中心静脈穿刺用のファントムを用いて,初期研修医に中心静脈穿刺の模擬実験を行った.
さらに,本システムを肝切除における術中ナビゲーションとして用いた.HMDを装着した術者は肝内のランドマークとなる肝静脈やグリソンの位置や深さを,立体感を持って実感できることができた.
AR技術を用いた本システムは,超音波医学教育から,中心静脈穿刺ナビゲーション,肝切除術中ナビゲーションと幅広い応用範囲を持った全く新しい技術であり,今後の発展が期待できる.