英文誌(2004-)
特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断4ナビゲーションシステムの今
(S224)
客観性向上のための超音波検査のナビゲーションシステム
The navigation system of the ultrasonography for the improvement in objectivity
松本 直樹1, 小川 眞広1, 平山 みどり1, 三浦 隆生1, 中河原 浩史1, 大城 周1, 山本 敏樹1, 森山 光彦1, 尾山 彰子2, 石田 秀明3
Naoki MATSUMOTO1, Masahiro OGAWA1, Midori HIRAYAMA1, Takao MIURA1, Hiroshi NAKAGAWARA1, Syu OSHIRO1, Toshiki YAMAMOTO1, Mitsuhiko MORIYAMA1, Akiko OYAMA2, Hideaki ISHIDA3
1駿河台日本大学病院内科, 2駿河台日本大学病院臨床検査部, 3秋田赤十字病院超音波センター
1Internal Medicine, Surugadai Nihon University Hospital, 2Division of clinical Laboratory, Surugadai Nihon University Hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasoud, Akita Red Cross Hospital
キーワード :
【目的】
他の検査と比較した場合,超音波検査の最大の弱点は客観性の低さである.これを改善しないため,非侵襲性でなおかつ高分解能の検査法の本来の良さが広く発揮されていないのが現状である.近年超音波診断装置の進歩と共にRaw dataによる画像管理と磁気センサー対応装置の出現により飛躍的に客観性が向上された.磁気センサー対応装置は,超音波画像に位置情報を加味し,種々の事柄を可能としている.GPS機能を用いたナビゲーションシステムもその一つであり,関心領域にマーキングをつけた画像保存も可能となっている.穿刺治療における応用は,穿刺針に磁気センサーを装着する事により針の先端の位置や穿刺方向を示すことも可能となっている.今回我々は超音波診断装置で可能なナビゲーションシステムの現状とその有用性について検討したので報告する.
【対象】
対象は当院で2008年から超音波検査を施行しナビゲーションを用いて検査を施行した2000症例以上の症例より目的別に分類し対象とした.
【方法】
使用装置はGEヘルスケア社製LOGIQ7, S8, E9.使用探触子:3.5c, C, 7L, 9L.Raw data保存を行い画像再出力により画像を用いた.)MRI:PHILIPS社製INTERA 1.5T ACHIEVA NOVA, CT:TOSHIBA社製
CT,MRI画像を使用する場合にはCDにDICOM画像を書き込み超音波診断装置内に入力しreference画像として用いた.穿刺についてはCIVCO社製Virtu TRAX Instrument Navigatorも一部の症例で使用した.使用目的別に画像比較,穿刺ガイド,治療効果判定に分類しその有用性と改善点について考察をしたので報告をする.
【結果】
Raw data管理による画像比較と磁気センサーを用いた画像比較は,超音波検査の客観性を向上させた.これまでの計測のみでは表現できない微細な変化の指摘に役立った.他画像との画像比較は画像格差を把握すると共に超音波検査における総合画像診断を可能とした.描出範囲の広いCT・MRIを利用しピンポイントに的を絞った病変部の詳細な観察は,超音波検査の時間・空間分解能の高さを理解する上で重要でありこれまでより有効に診断に活用できる事が確認された.
【考察】
消化器領域においては,肝細胞癌に対する治療効果判定や肝腫瘤病変の経過観察については過去画像の2画面並列により効果判定が可能で有り有用性が高かった.同様のシステムは整形外科,皮膚科,泌尿器領域において,健常部(反対側)のraw dataを再出力しreference画像とすることにより使用可能で有り診断がより確実なものとなった.さらに整形外科領域では可動前後の比較も可能であった.磁気センサー対応装置での並列表示は画像比較がリアルタイムに施行でき総合画像診断が超音波検査中にできるため有用性が高かった.また,描出範囲の狭い超音波検査の弱点を補い,穿刺ルートなどを決定する上でも有用であった.さらに,GPS機能を使用した場合には位置情報も含めたraw data保存も可能であるため術前精査で決定した位置情報も後日容易に把握可能となった.これを応用させることで術中エコーにも反映させる事が可能であり,最近では穿刺針にも装着可能となり用途が多方面に拡張している.超音波診断装置上での総合画像診断は,超音波検査の客観性を向上させるのみでは無く,精査の必要な部位をピンポイントに精密診断をするのに有用であった.現状での問題点は画像取り込みおよび保存に対する時間の延長,および並列画像がRaw dataとなっていない点であると考えられ今後の改良に期待がかかる.
【結論】
超音波検査のナビゲーションシステムは客観性向上に寄与し有用なシステムであると考えられた.