Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断2組織弾性評価手法の現状と将来動向

(S215)

組織弾性評価手法の世界的動向と消化器領域への展開

World Trend of Tissue Elasticity Imaging and Its Application to the Liver

工藤 正俊

Masatoshi KUDO

近畿大学医学部消化器内科学

Department of Gastroenterology and Hepatology, Kinki University School of Medicine

キーワード :

組織弾性評価手法には具体的には,大きく分けてStrain法とShear Wave Elastographyとの2つがありReal-time Elastography(RTE),FibroScan,Virtual Touch Quantification(VTQ),ShearWave Elastographyなどの手法がメインである.消化器領域の応用については肝臓の線維化診断(硬さ診断)に応用されている.世界的な動向としてFibroScanが圧倒的に多く用いられており,次にVTQおよびRTEが続いている.組織弾性法は急速に普及し始めているため,ヨーロッパ超音波医学会(EFSUMB)がエラストグラフィのガイドラインを2013年に作成し,日本超音波医学会(JSUM)でも2013年にガイドラインを作成した.ヨーロッパ超音波医学会のガイドラインは基礎と臨床の2つの論文がパブリッシュされている.日本のガイドラインとしては基礎と乳腺領域および肝臓領域の3つのガイドラインを出版した.
肝線維化の正確な評価にはStrain法を用いたRTE法が最も適している.すなわちFibroScanやVTQは炎症,黄疸,うっ血などの影響を受けるため正確な線維化診断が困難であるからである.我々は多施設共同研究において様々なパラメーターを評価した.
市販機に搭載されているLiver Fibrosis Index(LFI)では,相関はある程度みられるものの,お互いのFステージの間にはかなりの重複がみられた.しかしこれらのLFIのデータに線維化マーカーを組み合わせることにより,極めて高いAUROCが得られ高い線維化診断能が得られることが判明した.
統計学的解析の結果では各超音波エラストグラフィがいずれも高い肝線維化診断能を有する.しかしいずれのElastographyであっても肝線維化ステージ間での測定値に重なりが大きい.そこでデーターマイニングの手法を用いてElastographyと血清マーカーによる肝線維化診断へdicission treeを作成し評価した.この結果,Figureに示すようにこのdicission treeに従いほぼ適格に線維化を診断することができることが判明した.
以上よりRTE,FibroScan,VTQをはじめとした超音波Elastographyは,肝線維化を非侵襲的に診断することができるため,今後は生検診断を置き換えることができると考えられる.さらに,RTEはFibroScanやVTQとは異なり炎症,黄疸,うっ血などの影響を受けずに肝線維化ステージを診断できる点が有用と考えられた.また,Elastographyや血清線維化マーカーによるデーターマイニングを用いることで実臨床で肝生検に代わる非侵襲的肝線維化診断法となり得ると考えられる.