Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断1救急疾患の超音波診断

(S213)

整形外科領域の救急超音波診断

The emergency ultrasonography diagnosis of an orthopedics domain

前田 佳彦, 今田 秀尚, 田淵 友貴, 森田 香里, 鈴木 智哉, 水口 仁, 桑山 真紀, 佐野 幹夫

Yoshihiko MAEDA, Hidenao IMADA, Yuki TABUCHI, Kaori MORITA, Tomoya SUZUKI, Hitoshi MIZUGUCHI, Maki KUWAYAMA, Mikio SANO

医療法人豊田会刈谷豊田総合病院放射線技術科

Department of Radiation technology, TOYOTA-KAI Medical Corporation KARIYA TOYOTA General Hospital

キーワード :

【当院の現状】
当院は,刈谷市,高浜市並びにトヨタグループ8社により運営される医療法人である.病床数635床の急性期病院で,減少しつつあるものの1日平均2000名弱の外来患者が来院する(煩雑な診療の中で医師がUSを行うには限界がある).整形外科常勤医は10名で,整形外科超音波検査に対応可能なソノグラファーは3名である.
整形外科領域超音波検査の対象患者は,アキレス腱断裂や筋挫傷などスポーツ中の受傷,肋骨骨折や患部の痛みなどの交通外傷後などもっぱら急性期疾患が中心である.加えて,ばね指や腱鞘炎,肩の痛み,肘の痺れ,リウマチ患者など診療範囲の幅は広い.これらの背景から,当院では,超音波検査を整形外科初期診療におけるトリアージ的な位置づけとして活用している.しかし,『救急外来診療』という観点では,ソノグラファーは常駐しておらず,研修医が探触子を握るケースが圧倒的に多い.そこで,まずは『技術的支援として救急外来診療にソノグラファーを』という議論がスタートし始めた(体制構築が課題).

【整形外科超音波検査を歴史から紐解く】
骨,関節領域の画像診断では,これまで,X線写真が中心であった.主にX線写真で評価できるのは骨であり,整形外科医は骨の形や位置関係から骨折,脱臼を診断してきた.さらには,X線写真で評価ができない靱帯も,骨と骨の位置関係から間接的に損傷の程度を推測してきた.その後,靱帯が評価できるMRIとX線写真ではわからない骨内部の構造が評価できるCTが登場した.
X線写真,MRI,CTは,どれも『静止画』という共通点がある.これらと比較しUSが優る点は,『動きで観察できること』である.ここ10年でUSの画質が著しく向上したことも後押して,骨,関節領域におけるUSの可能性について非常に注目されるようになった.

【正確で迅速な対応を目指して】
整形外科領域の超音波診断学は,著しい発展を遂げている.が,探触子を自由自在に扱える整形外科医は多くはない(当院整形外科医との談話より).だからこそ,ソノグラファーが積極的に関わるというスタンスが重要になる.一部のスタッフ(医師やソノグラファー)がいないとUSを活用しきれない状態では,持続的という観点から好ましくない.やはり,USを扱えるスタッフを増やす,つまり母数を増やす必要がある(整形外科領域以外にも言えることだが).問題点を言い当てるのではなく,スタッフ育成や装置面など何をどうすればいいのかを,組織として取り組むことが望まれている.当院での取り組みは,研修医教育を一つの柱としてそのきっかけ作りに奮闘し始めている.

【超音波の威力】
USは『動きで観察できる』と冒頭で述べた.ここで,リアルタイムという言葉を加えたい.リアルタイムに動きが分かる(病態が視覚化できる).例えば,骨と骨を連結する靱帯の断裂では,ストレスを加えることで関節の不安定状態やその程度が評価できる.静止画では靱帯が連続しているように観察されても,ストレスを加えることで,実は完全に断裂しているケースもある.アキレス腱完全断裂では,足関節自然位で断端間に距離を認めても,足関節底屈位で断端同士が密着すること(保存治療の適応),断端同士の癒合状態を動かしながら判断できる.
リアルタイムに関節を動かし(自動的および他動的に),腱や靭帯,筋肉などの動きを評価できる点は,USの強みである.