Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム 領域横断1救急疾患の超音波診断

(S211)

造影超音波検査による急性腸間膜虚血に対する手術適応診断

Decision making of emergent laparotomy for ischemic bowel disease by contrast enhanced ultrasound examination

大堂 雅晴

Masaharu ODO

柳病院外科

Surgery, Yanagi Hospital

キーワード :

【背景】
消化器領域における救急疾患の多くは急性腹症腸閉塞(イレウス)である.1980年代には急性腹症腸閉塞診断における超音波検査(US)の有用性が多く報告された.しかしながらその後Computed Tomography(CT)の普及,機能向上および腸管ガスはUSに不向きであるとの固定概念の広がりもあり,US不要論も報告されている.今回,われわれはB−モードによる腸管壁検査に第二世代超音波造影剤による造影超音波検査(CEUS)による腸管壁血流評価を付加し,イレウスにおける超音波検査の生き残りの可能性を検討した.
【対象】
2009年12月よりイレウスに対してUS,CEUSを開始し42例に行った.内訳はnon-obstructive mesenteric ischemia(NOMI)11例
術後絞扼性腸閉塞10例,腹膜炎4例,鼠径ヘルニア3例,単純イレウス3例,上腸間膜動脈血栓症(SMAT)2例,大腿ヘルニア2例,腹壁瘢痕ヘルニア3例,炎症性腸疾患2例,閉鎖孔ヘルニア1例,虚血性腸炎1例,腸間膜静脈血栓症(MVT)1例であった.
【方法】
B-modeにてスクリーニング検査を行い,腸管壁肥厚(菲薄),蠕動運動不良部位にファーカスし推奨量のソナゾイドをbolus静注し動脈相での腸管造影を観察した.腸管の位置より高周波探触子が使用可能であれば造影剤の消失までの過程を観察した.壁の造影欠損を認めた場合腸管虚血の診断にて手術の適応と判断した.今回,絞扼性グループ(術後,ヘルニア嵌頓)と動脈性病変グループ(NOMI,SMAT)およによる腸管虚血の2グループに分類し評価を行った.
【結果】
絞扼性グループにおいて造影欠損症例は全例(10例)腸管切除の適応であった.うちヘルニアの2例において造影剤消失の遅延を認めたが1例は腸管温存が可能,残る1例は腸切除の適応であった.動脈性病変の造影欠損4例(1例:手術適応困難)は腸切除の適応であった.MVTは造影欠損の結果であり腸切除を行った.
【結語】
NOMIをはじめとする動脈性疾患においては造影欠損=腸切除の評価が可能であった.絞扼性の機序は嵌入→静脈うっ滞性可逆性虚血→静脈性梗塞→動脈性梗塞の多段階での成り立ちが報告されており動脈性造影効果陽性のみでの判断は困難であり静脈ドレナージパターンまでの評価が不可欠であり,造影での梗塞パターンの解明には今後の検討が必要である.