石原 美弥¹, 辻田 和宏², 堀口 明男³, 川口 真³, 笠松 直史⁴, 広田 和弘², 入澤 覚², 津田 均⁵, 浅野 友彦³

Miya ISHIHARA¹, Kazuhiro TSUJITA², Akio HORIGUCHI³, Makoto KAWAGUCHI³, Tadashi KASAMATSU⁴, Kazuhiro HIROTA², Kaku IRISAWA², Hitoshi TSUDA⁵, Tomohiko ASANO³

¹防衛医科大学校医用工学講座, ²富士フイルム株式会社R&D統括本部メディカルシステム開発センター, ³防衛医科大学校泌尿器科学講座, ⁴富士フイルム株式会社先端コア技術研究所, ⁵防衛医科大学校病態病理学講座

¹Department of Medical Engineering, National Defense Medical College, ²Medical system R&D center, R&D management headquarters, Fujifilm Corporation, ³Department of Urology, National Defense Medical College, ⁴Frontier core technology laboratories, R&D management headquarter, Fujifilm Corporation, ⁵Department of Basic Pathology, National Defense Medical College

キーワード :

【目的】
光音響画像は，他のモダリティでの実現が難しいcmオーダーの深さの機能画像を非侵襲的に簡便かつリアルタイムで取得出来る．我々は超音波診断装置用プローブを利用して超音波画像と重畳できる光音響画像取得システムの構築とファントム実験と動物実験による性能評価，そして光音響画像の臨床適用探索について検討したので報告する．
【方法及び結果】
光音響画像は生体にパルスレーザー光を照射し，光吸収体で発生した光音響波を検出し，光音響信号強度とその到達時間を用いて画像化する技術である．本研究では光ファイバーを利用した広面積レーザー照射法を採用しアレイの超音波診断装置用プローブを用いて取得した光音響信号から超音波画像と同様の原理で断層画像を再構築した．血管画像を取得できるように，光の波長はヘモグロビンの吸収波長に設定した．
ファントム実験では光音響画像と超音波画像の空間分解能を比較するために糸ファントムを対象にした．光音響画像と超音波画像共に径50μmの糸ファントムを明瞭に描出することができた．動物実験では防衛医科大学校動物実験倫理審査委員会での承認を得た上で，ウサギソケイ部を対象にしてスキャニングすることで3次元画像を取得した．光音響画像では高いコントラストで血管が描出できること，血管走行がイメージングできることを確認した．超音波画像では組織表面，血管などの界面からの反射による位置関係の把握ができた．これらの空間分解能が同程度の光音響画像と超音波画像を重畳できる，すなわち形態画像に血管画像の分布が重畳された画像が得られることを確認した．臨床研究では防衛医科大学校倫理委員会での承認を得た上で，前立腺癌の診断で根治的前立腺全摘術を施行した症例を対象とし，摘出直後にホルマリン未固定のまま前立腺癌の摘出標本における前立腺周囲および前立腺内部の血管分布のマッピングを行った．光音響画像と超音波画像の重畳画像が取得でき，特に神経血管束が豊富に分布する前立腺後外側に強いシグナルが認められた．この結果から微小血管をランドマークとした神経血管束同定の可能性が示された．
【考察及び結論】
構築したシステムで造影剤を使用することなく微細な血管網及びその走行が画像化できること，光音響画像と超音波画像を位置ずれなく重畳できることを示した．前立腺癌の摘出標本を対象にした結果からは根治的な前立腺全摘術における的確な神経温存のための光音響画像化技術の有用性が示唆された．超音波画像と重畳可能な光音響画像化技術は，小型，廉価，汎用性，かつ低侵襲で，広範に使用されている超音波画像診断技術の長所と光画像技術の長所を活かして，医療の現場で真に有用な新しい医用モダリティとしての確立を目指したい．
【謝辞】
本研究の一部は厚生労働省研究費補助金（医療機器開発推進研究事業）（H23−医療機器−一般005）の助成を受け実施された．