Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画5
日本超音波検査学会共同企画救急診療に超音波の“知”と“技”を生かす

(S199)

ER創設とトヨタウェイによる改善

Establishment of ER and the Improvement by TOYOTA WAY

岩瀬 三紀

Mitsunori IWASE

トヨタ記念病院循環器科

CARDIOLOGY, TOYOTA MEMORIAL HOSPITAL

キーワード :

トヨタ記念病院は病床513床の急性期病院であり,毎年約7000台の救急車と約3万5000人の救急患者さんを受け入れています.私は本来,循環器科医であり名大保健学科検査専攻の教員として7年余り勤務しました.2003年に新医師臨床研修医制度発足と同時に当院に赴任しました.当時の稲垣病院長が『これからは研修医教育とERが病院の生命線になる』と雄弁に語られ,ERトヨタと研修医教育の責任者を任されました.当時のERには常駐医師は存在せず,救急車搬入された患者さんの担当医決定をめぐる各科医師の戦場の様な状態でした(例えば,肺炎vs心不全戦争----実際は合併例が多い).当初,日勤帯の常駐医師は私と1年目と2年目の研修医の3名のみでした.幸いナースたちは,常駐医師の存在に対して安堵してくれ,各科の医師も救急車搬入時に『とりあえず岩瀬が初期対応してくれるから』と好意的で応援してくれました.以前の救急車搬入は毎年3000台程度でしたが,断らない救急を愚直に実践し,救急隊も喜び毎年搬入台数は,昨今の鰻価格の高騰のごとく『うなぎのぼり』に上昇しました.そして,救急の繁忙に対応すべく,ERローテートの重視が認められ,研修医が1年目も2年目も各2ヶ月間,計4ヶ月間のローテートになり,他院から救急医も集まり今では常駐の救急医4-5名体制になりました.そうなりますと,各科の医師が『人が多いから,とりあえずERで診てよ』と慢性疾患や精神疾患の患者さんも押しつけがあり,再び戦場化しました.しかし,内科部長会でDiscussionし,ERとの役割分担を明確化したところ,割といい関係に修復できました.
幸いERを軸にした研修教育は学生には好評で,毎年フルマッチングを続けています.ERはトヨタウェイ(Challenge, Kaizen, Genchi-Genbutu, Respect, Teamwork)の実践に最適な場所と私は考えます.重要なことは,ERに来る不安感を持った患者さんに笑顔を提供するためには,ナース,すべてコメディカル,MSW,事務,救急隊とあらゆる職種の連携が必須です.すべての職種が当事者意識を持つことがKEYと思います.『これは放射線技師の仕事,これは検査技師の仕事と』言い争いするのは止めましょう.患者さんの笑顔を創造するためには,誰が何をすべきで,そのためには自分たちは何が手助けできるのかを,多職種が前向きに考える様になれば最強のERとなります.ERでは日常業務中に突発的な問題が生じ,現場で多職種の職員同士が知恵を出しあう習慣ができれば,災害時の協力体制の基礎造りにも繋がります.当院の放射線技師は,当直前1時間前に全員一度はERを見学するようになり,ER職員と放射線技師の連携が著しく改善しました.検査技師もERにおける多職種連携の診療に積極的に参画していけば,ICUをはじめ病棟においても応用が可能で,検査科の存在意義を高めることになるでしょう.ERの現場の体験は,検査科に現場が何を求めていることを学ぶことのみならず,現場の採血も含めた検体採取の実情を理解した上での指導や要望は説得力があります.何をやるかをあれこれ議論ばかりしていないで,まずは心エコーからでも腹部エコーからでも始めて,患者さん目線で自分(検査技師)自身が何をすべきか,可能かを探りつつ改善を続け,検査科と病院の質向上に繋げましょう.『千里の道も一歩から』-老子より