Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画4
日本脳神経超音波学会共同企画頸動脈エコーガイドライン統一に向けて

(S196)

頸動脈エコー全国アンケート調査結果を検証する

The national survey of carotid ultrasonography

小谷 敦志1, 濱口 浩敏2, 松尾 汎3

Atsushi KOTANI1, Hirotoshi HAMAGUCHI2, Hiroshi MATSUO3

1近畿大学医学部附属病院中央臨床検査部, 2北播磨総合医療センター神経内科, 3松尾クリニック理事長

1Department of Clinical Laboratory, Kinki University Hospital, 2Department of Neurology, KITA-HARIMA Medical Center, 3President, Matsuo Clinic

キーワード :

【背景】
頸動脈エコー検査は様々な診療科から依頼されるが,各診療科で求められる検査項目が異なる.今まで頸部動脈エコーの検査ガイドラインとして,2009年に日本超音波医学会(JSUM)より提唱された「超音波による頸動脈病変の標準的評価法」と,2006年に日本脳神経超音波学会・栓子検出と治療学会合同ガイドライン作成委員会(JAN)による「頸部血管超音波検査ガイドライン」の2つを使用してきた.しかし,両者の内容には一部相違があり,なかには評価方法の違いから結果が異なる項目もあるため,検査結果の解釈には,どちらのガイドラインを基準にしたかを明確にする必要があった.また,一方のガイドラインの捕捉や留意点がもう一方のガイドラインで記載されている項目もあり,実際の検査時には両ガイドラインを参考にすることで,より信頼性の高い結果が得られることがあった.
今回,頸動脈エコーガイドラインの統一に向けて,各々の特徴と問題点を明らかにするため,大阪血管エコー研究会が中心となって行ったアンケート結果を再検証した.
【目的】
全国の施設において実際の検査で行われている評価内容を集約し,現状を把握する.
【対象と方法】
2010年5月に日本超音波医学会・血管超音波検査士および,血管診療技師認定機構・血管診療技師(CVT)が在籍する全国61施設を対象に,頸動脈エコースクリーニング検査において,1.必須項目と重症度判定で重視する評価項目,2.両ガイドラインで相違のある所見の計測法や表現法などの使用状況,3.各計測項目の再現性や妥当性の実際,4.報告様式と所見作成方法,5.再現性を良くする工夫,などを含むアンケートを依頼し,内容を集計した.
【結果】
回答は49施設から得られ,回収率は80.3%であった.評価項目について,80%以上の施設でmax IMT,プラーク厚,プラーク内部性状,CCA血流速度,ICA血流速度,VA血流速度が採用されていた.一方,プラーク数,プラークスコア,ECA血管径が採用されている施設は50%に満たなかった.検者再現性については,max IMT,CCA血管径,CCA血流速度,プラーク厚,プラーク表面性状で再現性がよいという印象をもたれており,mean IMT,VA血流速度,ICA血流速度については再現性が悪い印象であった.max IMTとmean IMTの計測法と算出法は,それぞれ72%と94%の施設が日本超音波医学会の基準を採用していたが,プラークの定義においては,日本脳神経超音波学会の基準を採用している施設が65%であった.一方で,プラーク性状評価の判定については,両学会の基準を合わせた独自の方法が用いられていた.狭窄の重症度評価としては,狭窄部の最大血流速度が最も重要視されていた.次いで径狭窄率,面積狭窄率の順に評価されていた.報告書についてはほとんどの施設がデジタル書式であり,シェーマと写真を添付して報告していた.再現性を良くするための工夫として,空間的計測位置や時相の統一,前回値を参照とするといった回答がみられた.
【考察・結語】
各施設のアンケート結果から,頸動脈エコースクリーニング評価は,ガイドラインを参考にしつつ,データの有用性や妥当性から評価項目を施設独自で選択的に使用している現状が判明した.ガイドラインは計測・評価に必要な基準を網羅しているため当然必要な指針である.本検討により実診療において使用される,各施設の立場に応じた最適な計測・評価方法も網羅したガイドラインの作成が必要であると実感した.本検討結果を改定頸動脈エコーガイドラインに活かしたい.