Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画3
日本消化器がん検診学会共同企画新たなカテゴリー分類!腹部超音波検診判定マニュアル

(S192)

臨床検査技師の立場からみた カテゴリー分類

Category classification judging from the viewpoint of the medical technologist

千葉 祐子

Yuuko CHIBA

公益財団法人北海道労働保健管理協会臨床検査部

Clinical inspection, Public interest foundation Hokkaido Industrial Health Management Fund

キーワード :

【目的】
H24年4月に「腹部超音波がん検診基準」(以下基準)を導入し2年が経過した.H24年の検診成績を元に本基準が私達にもたらした影響を分析し,「腹部超音波検診判定マニュアル」(以下マニュアル)についても考察する.
【対象】
H24年に当協会で腹部超音波検診を受診した14,283名のうち要精密検査になった776名.
【方法】
精密検査対象になった776名のうち,悪性腫瘍であった18名について,検診時のカテゴリー分類を精査する.また精密検査のなかで腎細胞がん,肝外胆管について考察を行う.
【結果】
H24年発見された悪性腫瘍は,肝細胞がん2例,転移性肝腫瘍1例,肝内胆管がん1例,膵臓がん4例,胆のうがん3例,腎細胞がん7例の計18例.カテゴリー(以下C)2は2例,C3は4例,C4は6例,C5は6例であった.
C2から胆のうがんと転移性肝腫瘍が発見された.胆のうの症例ではRASやコメット様エコーがあり技師は胆囊腺筋腫症を疑ったが初回受診であったため精密検査になった.肝臓の症例では技師は肝血管腫としたが,こちらも初回受診で20mmを越えていたため精密検査とした.
C3から発見された腎細胞がんは3例あった.腎細胞がんは辺縁低エコー帯を確認しにくく,突出や腫瘤内の無エコー域の存在で発見される例がある.今回腎細胞がん7例のうち辺縁低エコー帯が明らかであったC5は4例であった.当協会での導入時,腫瘤内部の無エコー域があっても該当するカテゴリーは3にとどまる事に異議が多かった.本マニュアルでは腫瘤内部に無エコー域があればC4と追加された.
肝外胆管の拡張は四捨五入し8mm以上でC3になる.H24年度の精密検査対象者のうち75例(10%)が肝外胆管の拡張であった.精検結果返却数は54例,うち1例が胆管のう腫だったが,他は経過観察11例で残りの42例(78%)が所見無しであった.当協会では8mmをC3としているが,精密検査にするか半年後に再検査するかは未だ医師の意見が分かれている.ただ,径を正しく計測するためには,胆管に垂直に超音波をあて,より明瞭に描出する技術が必要である.基準導入後は胆のう管の合流部分を避けての計測や,不自然な胆管の走行や拡張形態,胆管壁の肥厚に対しより慎重になった.十分に拡大し径を計測する方法も統一され,技術向上が悪性腫瘍の早期発見に寄与できると考えている.本マニュアルでは乳頭部近傍までの下部胆管に異常所見がなければC2と追加された.
【考察】
2年間基準を用いて超音波検診を行い,特に胆道では技術の向上が強いられている事に気付く.新たに追加された肝外胆管の乳頭部近傍までの下部胆管の描出については,超音波検査を行うならば下部胆管を描出する技術が必須だと読み取れる.胆道にあるカテゴリーダウンの内容は,技術を持ってC2C3を正しくに分ける事が検診の責務だということの作成者の強い意志表示だと考える.
カテゴリー分類を何故する必要があるのか,各施設独自の基準があるのだから超音波所見と判定区分があれば良いのではないかという意見もあるだろう.カテゴリーを付けるとは超音波所見についての証拠集めをし,善し悪しを分類して行く行為だ.2なのか3なのかの証拠を見つけていく,4と5を正確に読み緊急度を判断するなど,検診でプローブを持つ私達の責任は重い.マニュアルはあたかも簡易に判断できるツールに見えるが,超音波診断は技師と医師の恊働作業である事に変わりはない.本マニュアルは検診のみならず超音波検査に携わるものに共通した技術と考え方を持たせ,更なる社会貢献に踏み出す新たな“基準”になる.