Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画3
日本消化器がん検診学会共同企画新たなカテゴリー分類!腹部超音波検診判定マニュアル

(S191)

腹部超音波検診判定マニュアル:腎臓主な改訂部位と使用上の留意点

Manual for abdominal ultrasound screening:kidney

平井 都始子

Toshiko HIRAI

奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部

Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University

キーワード :

腎臓では,改訂でカテゴリーと判定区分を併記するため7項目が加えられた.新たに加わった腎や結石のサイズと腎盂拡張の程度による判定区分,多発性嚢胞腎,隔壁を認めるが明かな肥厚や結節を認めない嚢胞性病変を新たな項目として加えるなど,実際の現場では,得られた超音波所見をどのカテゴリーにするかがより判断しやすくなると考えている.また,2012年に日本超音波医学会用語・診断基準委員会から出された「腎細胞癌と他の腎腫瘤性病変の鑑別」に沿って用語を変更している.以下に,各改訂点について解説する.
【改訂部分の解説】
1.充実性病変
円形で輪郭明瞭平滑/側方陰影を加えた.辺縁低エコー帯が認められない場合でも無エコー域があればカテゴリー4とした.また,腎血管筋脂肪腫とする根拠として,輪郭不整/尾引き像を追加した.
「腎細胞癌と他の腎腫瘤性病変の鑑別」では,腎細胞癌のBモード所見の典型像として,「円形〜類円形,高頻度に腫瘍内出血や壊死を伴い,偽被膜(ハロー)の形成により辺縁低エコー帯を認める.内部に嚢胞壊死や高エコー部を伴う内部不均一な像が特徴である.」と記載されている.辺縁低エコー帯は腎細胞癌を考える大事な所見であるが,薄いため認識困難な症例が多いという意見があり,膨張性発育を示し偽被膜が存在する病変を示す超音波所見として円形で輪郭明瞭平滑/側方陰影を加えた.また,無エコー域を伴えばカテゴリー4とした.
2.嚢胞性病変
多発性嚢胞腎,肥厚の無い隔壁や石灰化像を伴う嚢胞を加えた.
両側性に大小の嚢胞が多発する多発性嚢胞腎は,単純嚢胞とは区別される病態であり,嚢胞内出血や石灰化の合併も多く腎癌の合併の診断が困難なため,新たに項目を追加した.
嚢胞性病変は腎の超音波検査で遭遇することが多く,明らかに肥厚した隔壁や嚢胞内結節は認められないが,経過観察すべき薄い隔壁や石灰化像を認める症例が比較的多く存在するため追加した.
3.石灰化像
腎結石や腎実質の石灰化はカテゴリー2であるが,尿路結石症の診療ガイドラインで10mm以上の結石は,積極的な結石除去が勧められるとしている.判定区分が異なるため分類した.
4.腎盂拡張
腎杯拡張を伴わない軽度の拡張は,病的意義がなく判定区分が異なるため追加した.
5.形態異常
両側の腎腫大と腎萎縮を追加した.変形を中心部エコーの変形とした.
頻度は少ないが両側腎の腫大を示す悪性病変が存在し,また,両側腎萎縮は治療の対象となるため判定区分を分けるために追加した.
【注意点】
腎臓は摘出術後や部分切除後,腎移植後などが他の臓器より多い.片腎が術後の場合は残存する腎臓は代償性肥大するが,これは腎腫大とは判定しない.また,部分切除の場合腎の変形を認めるが,手術による変形であることが判明している場合は,カテゴリー2と判定する.