Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画3
日本消化器がん検診学会共同企画新たなカテゴリー分類!腹部超音波検診判定マニュアル

(S189)

肝臓:主な改訂部位

Liver: main revision parts

熊田 卓

Takashi KUMADA

大垣市民病院消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

平成24年度の悪性新生物の部位別死亡率の中で肝臓は10万人に対しそれぞれ男性では32.7人と全体の中で4位を,女性では16.4人と全体の中で5位を示している.男性では平成17年をピークとして,女性では平成22年をピークとして近年徐々に減少傾向にある.その中で大きな部分を占める肝細胞がんの成因は,従来は90%以上がB型肝炎ウイルスもしくはC型肝炎ウイルスに起因するものであったが,21世紀に入ってからはそのどちらにも起因しない非B非C型の肝細胞がんが目立つようになり,最近では30%以上を占めるに至った.腹部超音波検査は任意型検診として腹部の実質臓器のがんの早期発見を目的として広く用いられてきたが,肝臓に関しては肝炎検診が別個に行われ,ウイルス肝炎キャリアであることが判明すると高危険群として病院もしくは診療所でサーベイランスが行われ,検診で発見される肝がん数もそれほど多くはなかった.しかし,前述したように高危険群の設定が困難な非B非C型の肝細胞がんの増加に伴い,検診における腹部超音波スクリーニング検査の重要性が明らかに増してきている.
肝臓ではまず病変を充実性病変,嚢胞性病変,びまん性病変に分けてチェックするようになっている.肝臓では悪性新生物は充実性病変となることが多く基本的にはカテゴリー3以上に分類される.15mm以上の腫瘍径をカテゴリー4としたのは肝腫瘍の中で最も多い肝細胞がんを念頭に置いて15mm以上になると悪性度が増し,脈管浸潤や肝内転移が多くなるという報告があるからである.また,肝細胞がんは背景にびまん性肝疾患を伴うことが多く,後述するカテゴリー3の瀰漫性病変の合併を認めるときは充実性病変が存在するだけでカテゴリー4となる.辺縁低エコー帯・後方エコー増強・多発のいずれかを認める腫瘍,腫瘍の末梢の胆管の拡張を認める場合もカテゴリー4となる.モザイクパターン,クラスターサイン,肝内胆管・血管いずれかの断裂を伴う場合はカテゴリー5である.問題点は充実性病変が見つかればカテゴリー3に該当する病変が多くなることである.特に高エコー病変でカテゴリー3と診断されることが多く,マージナルストロングエコー・カメレオンサイン・ワックスアンドウエインサインなど血管腫の特徴的所見をしっかりとらえてカテゴリー2と判定することが求められる.また経時的な変化(過去2回以上)で,新病変の出現,病変の増大があるときは判定で考慮する.嚢胞性病変では嚢胞内の結節・壁肥厚・隔壁肥厚を十分に観察して判定する.びまん性病変は当初,がん検診とは直接関係しないということから除かれていたが,肝臓では背景にびまん性病変を認める悪性新生物が多いため所見に組み入れられた.脂肪肝の所見は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を,また慢性肝炎,肝硬変の所見は今後の発がんを念頭に置いた.中でも肝硬変,肝細胞がんに進展する可能性のあるNASHを非アルコール性脂肪肝(NAFL)と区別することは画像からは困難で,他の臨牀情報を参考とする必要がある.また,時に充実性病変との鑑別に苦慮する限局性低脂肪化域に遭遇する.好発部位を注)として掲載した.また,不整形の低エコー域でスペックルパターンに乱れがなくカラードプラにて血流走行に偏位を認めない場合は充限局性低脂肪化域と判断できる画像を記録することが求められる.
今後,C型肝炎キャリアに併発する肝細胞がんの頻度は激減し,肝炎ウイルスに関係しない肝細胞がんの増加し,腹部超音波スクリーニング検査の重要性が増すと予想される.