Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画3
日本消化器がん検診学会共同企画新たなカテゴリー分類!腹部超音波検診判定マニュアル

(S189)

腹部超音波検診マニュアル−総論

Examination Manual for Abdominal Ultrasound Screening - An Introduction

水間 美宏

Yoshihiro MIZUMA

神戸アドベンチスト病院消化器内科

Department of Gastoroenterology, Kobe Adventist Hospital

キーワード :

【はじめに】
腹部超音波検査は肝臓・胆道・膵臓といった腹部臓器の難治がんの早期診断には欠くことのできない診断法である.
しかしながら,一般に人間ドック健診における腹部超音波検査では多数の臓器を扱い,がん以外の病変も対象とすること,がん発見時の所見の記載方法が統一されていないことなどの理由からがん検診としての精度や有効性の評価が行われていない.さらに,超音波検査の診断能は検査環境や検査施行者の技術レベルに依存するが,実施方法についても明確に規定されていなかった.
日本消化器がん検診学会超音波検診委員会が中心となり,腹部超音波がん検診の質の向上を目指した実施基準,ならびにがん検診としての精度評価を可能とするための判定基準からなる腹部超音波がん検診基準を2011年に発行した.その後,日本超音波医学会用語・診断基準委員会腹部超音波がん検診のカテゴリーに関する小委員会と連携して一部修正ならびに項目の追加を行うとともに,日本人間ドック学会画像検査判定ガイドライン作成委員会腹部超音波部門小委員会とも連携し,判定区分を含めたマニュアルを作成した.したがってマニュアルの内容については,日本消化器がん検診学会,日本超音波医学会,日本人間ドック学会で同一のものである.
これらの基準を広く普及させることにより,腹部超音波検診の検査法の質的向上と均質化および,がんに対する判定基準の共通化を諮り,将来的には腹部超音波検診のがん検診としての精度評価ならびに有効性評価を行うことを目指すこととしている.
【実施基準】
マニュアルは,実施基準とカテゴリー・判定区分からなるが,実施基準については主項目のみ列挙しておく.
第一に超音波スクリーニングの標準化においては,対象臓器,診断装置,検査担当者,診断技術,判定・事後管理について,第二に精度管理については,検診に関する基本的な指標の管理,予後調査について,第三には技師の教育について述べられている.
【カテゴリー】
検査担当者は,肝,胆道,膵,腎,脾,その他の対象臓器の観察において認められた異常所見について,マニュアルに示す超音波画像所見のどの項目に該当するかを詳細に検討し,該当項目を選択する.
選択された超音波画像所見に応じて,がんに関してのカテゴリー,結果通知表記載の超音波所見ならびに判定区分が決まる.
カテゴリーは,がんの判定の基準であるが,超音波検査で認められる所見の集約である.すなわち,カテゴリー0:判定不能は,装置の不良,被検者,検者の要因などにより判断できないもの,カテゴリー1:異常なしは異常所見がないもので,正常のバリエーションを含む,カテゴリー2:良性は,明らかな良性病変を認めるもの,カテゴリー3:良悪性の判定困難は,良悪性の判定困難な病変あるいは悪性病変の存在を疑う間接所見を認めるもので,高危険群を含む,カテゴリー4:悪性疑いは,悪性の可能性の高い病変を認めるもの,カテゴリー5:悪性は,明らかな悪性病変を認めるものである.
【判定区分】
超音波所見は,超音波画像所見の内容を受診者に知らせるための簡略化した表示名である.通知表には超音波所見名を記載する.カテゴリー4,5の場合には“腫瘍”,カテゴリー3の限局性病変は“腫瘤”と記載し,疑いを含むものとする.
判定区分は,原則的には超音波画像上の異常所見に応じて決められるが,血液検査など超音波検査以外の検査所見や前回所見との比較などを考慮し判定医が最終決定する.判定区分は,A:異常なし,B:軽度異常,C:要経過観察・要再検査・生活指導,D:要医療(D1:要治療,D2:要精検),E:治療中となる.