Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画2
日本消化器内視鏡学会附置研究会 超音波内視鏡下治療研究会共同企画消化器領域におけるEUS-FNAの現在とこれから

(S187)

EUS下膵管ドレナージ術

EUS guided pancreatic duct drainage

北野 雅之, 工藤 正俊

Masayuki KITANO, Masatoshi KUDO

近畿大学医学部消化器内科

Department of Gastroeterology and Hepatology, Kinki University Faculty of Medicine

キーワード :

EUSガイド下膵管ドレナージ術(EUS-guided pancreatic duct drainage)は慢性膵炎の膵管内圧上昇に伴う疼痛に対して行われるEUS下治療であり,EUS下膵胃吻合術(EUS-guided pancreacogastrostomy)または膵十二指腸吻合術(EUS-guided pancreatobulbostomy)や,EUS下ランデブー法によるステント留置術(EUS-guided rendezvous drainage of obstructed pancreatic duct)が報告されている.ERCPによる膵管ドレナージ術が困難な場合で,主膵管径拡張が存在し,かつ有症状(腹痛,糖尿病増悪)が適応となる.①慢性膵炎,②膵腫瘍切除術後の胃膵吻合部狭窄または閉塞,③胃切除後などの消化管再建術後のため乳頭への到達が困難の場合,この治療が行われることがある.外科的治療と使い分けについては確立されたものはないが,現時点では消化管再建術後,急性膵炎あるいは慢性膵炎急性増悪により胃と膵の間に癒着が存在する症例が,膵液漏等の合併症が少ないと考えられ,本治療が治療選択肢のひとつとなりうる.
基本的手技は,ランデブー法によるステント留置術および膵胃(十二指腸)吻合術の2通りの治療法に大別される.第一選択としてランデブー法によるステント留置術を試みる.ガイドワイヤーが狭窄部を通過不可能な場合や膵管口が完全閉塞している場合は,穿刺部に直接ステントを留置するEUS下膵胃(十二指腸)吻合術を考慮する.
EUS下ランデブー法によるステント留置術(EUS-guided rendezvous drainage of obstructed pancreatic duct)は,慢性膵炎による膵管狭窄や膵胃吻合再建術後吻合部狭窄においてEUSを用いて拡張膵管を穿刺し,ガイドワイヤーを順行性に狭窄膵管部を通過させた後,ステントを留置する方法である.本来の膵管開口部よりステントを留置するため,留置後のステントトラブルはEUS下膵胃吻合術より低く,膵液漏の危険性が低いため,EUS下膵管ドレナージ術の第一選択として試みるべき手技である.本手技が成功するかどうかは,ガイドワイヤーが狭窄部を通過するかどうかである.穿刺後,ガイドワイヤー先端が穿刺部乳頭部側ではなく,尾側に向きガイドワイヤーが膵尾部末端でループになってしまうと成功率は低下する.本手技の成功させるためには,穿刺前にEUS画像およびX線透視でガイドワイヤー先端が穿刺部乳頭部側を向くように試みる必要がある.手技成功率は,74%とやや低いが,偶発症の頻度はEUS下膵胃吻合術と比較すると少ない.
EUS下膵胃吻合術(EUS-guided pancreacogastrostomy reconstruction)は,消化管再建術後胃膵吻合部閉塞やEUS下ランデブー法でガイドワイヤーが膵管狭窄部を通過不可能な症例において,EUSを用いて胃と膵に膵管ステントによる瘘孔を形成する手技である.手技成功率は,89%であるが,出血,膵液漏等の偶発症や処置後に膵管ステント迷入の可能性があり,注意を要する.
EUS下膵管ドレナージ術は,適応・安全性・長期予後について十分には確立されていないが,ERCP困難な閉塞性膵炎に対して,外科的治療の前に検討できる治療選択肢となりうると考えられる.