Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画2
日本消化器内視鏡学会附置研究会 超音波内視鏡下治療研究会共同企画消化器領域におけるEUS-FNAの現在とこれから

(S186)

超音波内視鏡ガイド下膵嚢胞ドレナージ術の現状と今後

Current Status and Future of Endoscopic ultrasonography-guided pancreatic cyst drainage

岡部 義信, 石田 祐介

Yoshinobu OKABE, Yusuke ISHIDA

久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門

Division of Gastroenterology, Department of Medicine, Kurume University School of Medicine

キーワード :

膵仮性嚢胞に対する超音波内視鏡ガイド下膵嚢胞ドレナージ術(Endoscopic ultrasonography-guided pancreatic cyst drainage: EUS-CD)は,1992年にGrimmら(1)によって初めて報告されたEUS-FNAの応用手技である.従来,膵仮性嚢胞に対しては,外科的・経皮的・経乳頭的ドレナージ,経消化管的直視下ドレナージが施行されてきたが,EUS-CDは他のドレナージ法に比し偶発症の頻度が低く,同等の効果が得られることより近年主流となってきた.2009年には,日本膵臓学会より「膵仮性嚢胞に対する内視鏡的治療ガイドライン(2)」が提唱され,本手技も標準的な内視鏡治療に位置付けられつつある.
膵仮性嚢胞に対するEUS-CDの適応は,仮性嚢胞と消化管壁が密着していることが大前提であり,発症6週間以降で縮小が期待できず,また嚢胞径6cm以上(6 rules)とされている.また,嚢胞径の急速増大,腹痛などの有症状例,嚢胞内感染なども本手技の適応とされる.基本的な手順は,穿刺用コンベックス型EUSを用いて,経消化管的に嚢胞腔を描出し適正な部位より,19G針を用いて嚢胞腔を穿刺する.針の外筒を残したまま内筒を抜去し,ガイドワイヤーを嚢胞腔内へ十分に留置し,針を抜去する.その後,留置したガイドワイヤー下に穿刺口拡張を行い,ドレナージチューブを留置する.本手技は高い成功率が報告されているが,本邦では未だ専用のデバイスが市販されておらず,主に胆膵内視鏡領域で使用されているデバイスを応用して用いているのが現状である.最近では,通電ダイレイターやメタリックステントを用いた報告もあり,今後の手技手順の改良が期待される.
2012年にAtlanta分類が改訂(3)され,急性浮腫性膵炎に起因したacute peripancreatic fluid collections(APFC)(onset<4weeks)とPancreatic pseudocyst(onset>4weeks),急性壊死性膵炎に起因したacute necrotic collection(ANC)(onset<4weeks)とwalled-off pancreatic necrosis(WON)(onset>4weeks)と分類され,より膵周囲の液体貯留の病態が理解しやすくなった.今後は,本分類に従ったEUS-CDの適応や手技,さらにはマネージメントを再考することが望まれる.なお,本手技後に内視鏡的治療を追加あるいは外科的治療を行える柔軟な対応が必要であり,現段階では専門施設で施行することが望ましいと考えている.本講演では,EUS-CDの現状と今後について紹介する予定である.
【参考文献】
(1)Grimm H, et al. Endosonography-guided drainage of a pancreatic pseudocyst. Gastrointest Endosc 38: 170-171,1992,
(2)乾和郎,ほか.厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班,膵仮性嚢胞の内視鏡的治療ガイドライン2009.膵臓24:571-593,2009,
(3)Banks PA, et al. Classification of acute pancreatitis--2012: revision of the Atlanta classification and definitions by international consensus. Gut 62: 102-111,2013