Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画2
日本消化器内視鏡学会附置研究会 超音波内視鏡下治療研究会共同企画消化器領域におけるEUS-FNAの現在とこれから

(S186)

EUSガイド下胆道ドレナージの現在とこれから

Present and future of EUS - guided Biliary Drainage

原 和生

Kazuo HARA

愛知県がんセンター中央病院消化器内科

Department of Gastroenterology, Aichi Cancer Center Hospital

キーワード :

EUSガイド下治療の発展にはめざましいものがある.なかでもERCP不成功例に対するEUS-guided Biliary Drainage(EUS-BD) には大きな注目が集まっている.EUS-BDは,Giovanniniらが2001年に“Endoscopic ultrasound-guided bilioduodenal anastomosis”を報告したのが始まりで,本邦では,山雄らが2006年に論文報告したEUS下胆管十二指腸吻合(EUS-guided choledochoduodenostomy: EUS-CDS)が本邦最初の報告例である.EUS-BDは大きく直接法とランデブー法に分けられ,直接法は穿刺を行う消化管の部位,穿刺対象となる胆管の部位によって複数のドレナージルートが存在する.直接法を大きく分けると,経肝内胆管ルート,経肝外胆管ルート,経胆嚢ルートに分けられるが,現状ではEUS-guided hepaticogastrostomy(EUS-HGS)とEUS-CDSが広く行われている.EUS-HGSとEUS-CDSを直接比較したRCTがないため,厳密な比較検討は困難であるが,手技の難易度,ステントの開存期間,偶発症など,多くの点でEUS-CDSがEUS-HGSに勝っている.ただし,十二指腸球部から胃の遠位側に消化管狭窄を認める場合は,EUS-HGSを選択することになる.最近では,EUS-guided Antegrade DrainageやEUS-HGS+ Antegrade Drainageについての報告も見られているが,乳頭部にかかるようなAntegrade Drainageの留置を行うと,膵炎のリスクがあるため注意を要する.EUS-BD直接法の最大の利点の一つに“膵炎の発症がない”ことがあり,この利点を失う留置法を行えば,EUS-ガイド下治療の利点そのものがなくなってしまうことを肝に銘じるべきである.現状では,EUS-BDの適応はERCP不能例,EBD不成功例が良い適応と考えられる.
ランデブー法は,EUS下に肝内胆管または肝外胆管を穿刺後,胆管内にガイドワイヤを挿入し,消化管内からこのガイドワイヤ誘導下に経乳頭的処置を行う方法をランデブー法と呼ぶ.ランデブー法は,直接法に比べ胆汁性腹膜炎の発生頻度が低く,その他の重篤な偶発症の発生頻度も低いと考えられている.しかし,ガイドワイヤーによる狭窄突破が困難な症例があるため直接法に比べて手技の成功率が劣ることや手技が煩雑であることなどの短所もある.現状では,良性胆管狭窄や外科術前の胆管ドレナージなどが良い適応と思われる.
EUS-BDの臨床的有用性は明らかであるが,1.適応,2.ドレナージルートの選択,3.手技の標準化,4.専用の処置具の開発,5.偶発症の予防と対策など多くの解決すべき問題が残っている.
これらの課題が克服された暁には,PTBDやEBDを凌駕する手技になり,悪性胆管狭窄に対する第一選択のドレナージ法になる可能性すら秘めている.