Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画2
日本消化器内視鏡学会附置研究会 超音波内視鏡下治療研究会共同企画消化器領域におけるEUS-FNAの現在とこれから

(S185)

EUS-FNAの適応領域と疾患

Accessible regions and targeted diseases by EUS-FNA

安田 一朗1, 土井 晋平1, 岩下 拓司2

Ichiro YASUDA1, Shinpei DOI1, Takuji IWASHITA2

1帝京大学溝口病院消化器内科, 2岐阜大学第一内科

1Department of Gastroenterology, Teikyo University Mizonokuchi Hospital, 2First Department of Internal Medicine, Gifu University

キーワード :

1992年Vilmannらによって膵腫瘍に対するEUS-FNAが報告されて以来,様々な臓器・病態におけるEUS-FNAの有用性が報告されている.現在,最も主な適応となっているのは,膵癌化学療法前の確定診断であるが,消化管粘膜下腫瘍,腹腔内リンパ節・腫瘤に対しても広く行われている.今回は,これまでに我々が報告してきたEUS-FNAの適応拡大に関する検討について紹介する.
【肺癌縦隔リンパ節転移診断(N-staging)】
縦隔リンパ節に対するEUS-FNAは1993年Wiersemaらによって初めて報告されており,肺癌のN-staging目的のEUS-FNAは欧米においては比較的古くから行われてきた.2009年に我々は肺癌術前症例80例におけるEUS-FNAのN-staging診断能をCT,FDG-PETと比較した結果を報告したが,正診率は91%,71%,77%とEUS-FNAが有意に優れていた.その後,EBUS-TBNAの開発・普及とともにEUS-FNAの存在感が若干薄れつつあるが,両検査の対象部位が一部異なることから併せて行うことが,より正確なN-stagingに有用であることを2011年に報告した.
【サルコイドーシス】
両側肺門リンパ節腫脹を呈する良性疾患であるが,しばしばリンパ腫や結核など他疾患との鑑別が問題となる.疑診36例に対して大口径針(19G針)を用いて組織診断を試みた結果,正診率95%と良好な成績であった.
【リンパ腫】
従来,リンパ腫の診断は,細胞診を基本とするFNAでは難しいとされてきたが,大口径針を用いて組織検体を採取することによって正診率98%,WHO分類に基づく亜型分類も88%で可能であることを2006年に報告した.その後さらに,flow cytometryによる表面マーカー解析,染色体分析を含めた診断能についても検討し,その有用性を2012年に報告した.
【自己免疫性膵炎】
lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis,閉塞性静脈炎,IgG4陽性細胞浸潤を病理組織学的特徴とする診断は,19G針による組織採取により43%の症例で可能であった.
【手術・化学療法後のリンパ節腫脹】
手術・化学療法後のリンパ節腫脹は,再発か非特異的か他疾患の出現か判断に迷うことがある.こうした症例42例におけるFNAの診断能を検討した結果,98%と良好な成績であった.
【副腎】
左副腎はEUSで容易かつ明瞭に描出できる臓器であり,左副腎病変に対するFNAは以前から行われてきた.また,副腎は肺癌の転移好発部位であり,術前にN-stagingとともに併せて評価することが有用と考え,さらに右副腎の描出率についての検討も加えてその診断能を評価した.150例の術前肺癌症例において両側副腎をルーチンに観察し,異常があればFNAを行ったところ,右副腎の描出率は87.3%であり,副腎転移の正診率は100%とCT, PET-CTよりも優れていた.
【脾】
脾も経胃的に容易かつ明瞭に描出できる臓器である.病変の発生頻度は少ないもののFNAの対象となりうる臓器である.
【胆道】
胆管狭窄の診断は,通常経乳頭的なブラシ細胞診や生検によって行われるが,その感度は必ずしも満足できるレベルではない.自験例225例を検討した結果,その感度は71.4%であり,こうした経乳頭的アプローチで診断できなかった症例22例に対してFNAを行ったところ,全例に正診を得た.
【大動脈分岐リンパ節】
EUSでアプローチできるリンパ節領域は食道・胃・十二指腸周囲と考えられ,後縦隔,腹腔動脈周囲,肝十二指腸間膜などが対象とされてきたが,実際には消化管はかなり伸びるため,傍大動脈については総腸骨動脈分岐付近までアプローチ可能であることを報告した.
【結語】
EUS-FNAは,縦隔・腹腔内のかなり広範囲な領域にアプローチ可能であり,また,大口径針を用いればより多くの組織採取が可能となり,診断可能となる疾患も多い.