Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

共同企画2
日本消化器内視鏡学会附置研究会 超音波内視鏡下治療研究会共同企画消化器領域におけるEUS-FNAの現在とこれから

(S184)

膵病変に対するEUS-FNA

EUS-FNA in Pancreatic lesions

良沢 昭銘, 岩野 博俊, 田場 久美子

Shomei RYOZAWA, Hirotoshi IWANO, Kumiko TABA

埼玉医科大学国際医療センター消化器内科

Department of Gastroenterology, Saitama Medical University International Medical Center

キーワード :

【背景】
EUS-FNA(Endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration:超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引術)は,超音波内視鏡(EUS)を用いて行う針生検である.
【目的と対象】
消化管壁内病変や消化管近傍臓器で,これまで非手術的な組織採取が困難であった病変に対して,コンベックス型やリニア型と呼ばれるEUS(体外式超音波装置のプローベの小型のものが先端についている内視鏡)を用いることにより,超音波画像下に細胞診・組織診を安全かつ確実に行えるのが特徴である.
【方法】
EUS-FNAに用いられる穿刺用EUSおよび穿刺針は各社から市販されている.基本的なEUS-FNA用の穿刺針は,針とスタイレットおよびシースの三重構造になっている.針の太さについては,19ゲージ,22ゲージ,25ゲージなどがあり,病変の性状や部位によって使い分けられる.また,特殊な穿刺針として,スプリング装置による自動穿刺機能を有する穿刺針(オリンパス社製,NA-11J-KB)や,確実な組織診を目的としたtrucutタイプの穿刺針(Wilson-Cook社製,Quick-Core®)がある.
穿刺手技については,①まず超音波内視鏡を食道,胃,あるいは十二指腸まで挿入してBモード画像で病変を捉え,次にカラードプラで穿刺経路に血管が介在しないことを確認する.②穿刺針のシースが鉗子口から確実に出ていることを超音波画像あるいは内視鏡画像で確認する.③穿刺角度や位置を確認しながら針を穿刺対象の病変の直上まで誘導する.④穿刺方向を定めた後,針を病変に刺入する.⑤次にスタイレットを完全に抜去し,穿刺針に20mlのシリンジを装着し陰圧をかけた状態で,病変内で10数回穿刺針を前後に往復させる.⑥シリンジの陰圧を解除し,針を病変から抜去する.⑦得られた検体を用いて細胞診・組織診を行う.
【結論】
膵病変に対するEUS-FNAの診断能は高く,その正診率は85-95%,感度は64-92%と良好な成績が報告されている.これらの成績は,ERCPによる細胞診やUSガイド下,CTガイド下の穿刺吸引細胞診・組織診などと比べて同等以上の数字である.偶発症については,感染,出血,穿孔,膵炎などが報告されているが,その頻度は0.5-2%と稀である.EUS-FNAでは,病変周囲の脈管の観察とともに,穿刺針全体の動きをリアルタイムに描出しながら穿刺を行うため,出血などの偶発症が少ないものと考えられる.腹膜播種については,現在までに報告されているのは,嚢胞性膵腫瘍に対する穿刺によるものなど数例のみである.
【考察】
EUS-FNAはこれまで生検が困難であった病変に対して安全かつ確実に確定診断を行えるという点で非常に有用であると考える.特に2010年に保険収載されてからは爆発的な勢いで各施設での導入が進んでいる.そして手技の普及とともに検体処理が問題となってくると思われる.これまでは,欧米を中心としてEUS-FNAは臨床検査技師あるいは病理医の立会いのもと,迅速細胞診の結果をもとに施行すべき(ROSE:rapid on-site cytopathological evaluation)とされている.しかしながら,少なくとも日本では人員の問題からROSEを施行できている施設はほんの一部の恵まれた施設にとどまっているというのが現状である.ROSEを用いている施設のほとんどで正診率が90%を超えているという報告がある一方で,ROSEを用いなくても同等の成績が得られている施設もある.益々増加するEUS-FNAに対して,どのような体制でどういった検体処理をするのがもっとも効率よく高い正診率が得られるのか,今後のさらなる検討が望まれる.