中谷 敏

Satoshi NAKATANI

大阪大学大学院医学系研究科機能診断科学

Functional Diagnostics, Osaka University Graduate School of Medicine

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日本心エコー図学会は「心エコー図学研究の発展を図り，その成果の臨床的普及に努め，これを通じて心臓血管病学の発展に寄与する」ことを目的として設立された学会である．1989年に設立された日本心エコー図研究会を母体とし，1994年に日本心エコー図学会に名称を変更して現在に至る．研究会設立の翌1990年には早くも第一回集会を開催したが，これは第一回アメリカ心エコー図学会学術集会に先行していた．このことからもわかるように心エコー図に特化した学会活動は当時世界的にも先進的な取り組みだったと言えよう．当然のことながら，日本心エコー図学会は日本超音波医学会に比べて所帯が小さい．しかし，このことは小回りが利くということでもある．たとえばstructural heart diseaseのカテーテル治療が注目を集めている現在，その実施に際しての心エコー図の重要性に着目し，いちはやくstructural heart disease診療に特化した認証医システムを立ち上げ，さらにそのための講習会を定期的に実施している．この取り組みは欧米でも例を見ないものであり，小回りが利くからこそ実行できたものと考えられる．また心エコー図を使用した多施設共同研究を積極的に推進すべく学術プロジェクト委員会を創設し，募集で決定した研究プロジェクトに対し全国的に参加施設を募って研究完遂の補助を行っている．これらはいずれも構想後，半年程度で実施されており小回りが利くというメリットを最大限に活かしたものと言えよう．さらに循環器領域に分野が限られていることから極めて専門性に富んだ話題を扱うことができるというのもメリットである．学術集会ではアメリカ心エコー図学会，ヨーロッパ心血管イメージング学会，韓国心エコー図学会との交流が積極的に行われ，最先端のトピックスに関する情報交換が行われている．このことは会員のモチベーションを上げるのに役立っている．一方，日本心エコー図学会では工学系の研究者の参加が少なく，超音波の理論的・技術的側面に関しての研究が少ない．学術集会においてもこの方面のディスカッションが深まらないのが現実である．また他領域にまたがった横断的研究も困難である．日本超音波医学会はこれらの問題点を解決しうる．日本超音波医学会と日本心エコー図学会の両方に参加することで初めてバランスの取れた知識習得が可能になるものと思われる．