Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
コメディカル:循環器領域

(S706)

くも膜下出血に合併する左室壁運動異常(たこつぼ型vs逆たこつぼ型)に関する検討

Assessment of Wall Motion Abnormality (Takotsubo Cardiomyopathy vs Reverse Takotsubo Cardiomyopathy) in Patients with Subarachnoid Hemorrhge

高橋 礼子1, 杉本 恵子2, 大平 佳美1, 中村 和広1, 山田 晶3, 稲枡 丈司4, 石井 潤一1, 岩瀬 正嗣2

Ayako TAKAHASHI1, Keiko SUGIMOTO2, Yoshimi OOHIRA1, Kazuhiro NAKAMURA1, Akira YAMADA3, Jouji INAMASU4, Junichi ISHII1, Masatsugu IWASE2

1藤田保健衛生大学病院臨床検査部, 2藤田保健衛生大学医療科学部, 3藤田保健衛生大学医学部循環器内科, 4藤田保健衛生大学医学部脳神経外科

1Department of Clinical Laboratory, Fujita Health University Hospital, 2School of Health Scienceies, Fujita Health University, 3School of Medicine, Department of Cardiology, Fujita Health University, 4School of Medicine, Department of Neurosurgery, Fujita Health University

キーワード :

【背景】
くも膜下出血(SAH)急性期には,しばしば心電図異常,左室壁運動異常(WMA)など多彩な心所見が出現することが知られている.WMAの合併は,続発する脳血管攣縮を増悪させSAH患者の予後を悪化させるという報告もあり,WMA合併のメカニズム解明や病態把握は重要である.
【目的】
近年,WMA合併について数種類の出現パターンの存在が明らかとなってきた.そこで,今回我々は,SAHに合併するWMAの出現パターンのうち,たこつぼ型と逆たこつぼ型の2パターンにおける背景因子,検査所見を検討することを目的とした.
【対象】
2007年4月〜2012年8月に当大学病院総合救命救急センターに入院した脳動脈瘤破裂によるSAH患者のうち,WMAを合併した24例(女性18例,平均年齢67.8±10.0歳)を対象とした.なお,心疾患の既往歴がある症例は除外した.
【方法】
入院時に採血と心エコー図検査を施行した.採血では血中カテコールアミン値(アドレナリン,ノルアドレナリン),血糖値,トロポニンI値,エストラジオール値の測定を行った.心エコー図検査(GE社製Vivid7)では,左室長軸,短軸,四腔および二腔断面像からAmerican Society of Echocardiographyによる左室17分割法に従い,各セグメントのWMAの有無を判定した.WMA出現の部位により,たこつぼ型と逆たこつぼ型の2種類に分類し検討を行った.
【結果】
①WMAの内訳は,たこつぼ型19例,逆たこつぼ型5例であった.②2群間(たこつぼ型vs逆たこつぼ型)で検討した結果,たこつぼ型が逆たこつぼ型に比較し年齢は有意に高く(71.8±10.9歳 vs 52.8±4.3歳, p=0.001),エストラジオール値は有意に低かった(15.2±6.2 vs 27.0±10.6, p=0.007).収縮期血圧,血中カテコールアミン値,血糖値,トロポニンI値においては2群間で有意差を認めなかった.③心エコーのパラメーターに関しては,IVC径において有意差を認めたが(15.8±4.3mm vs 23.7±4.2mm, p=0.005),その他のパラメーター(EF, EDV, ESV, LVDd, LVMI, E/E’, LAV)においては有意差が認められなかった.④Χ2乗検定の結果,動脈瘤の位置,糖尿病,高血圧,脂質代謝異常の既往歴,SAHの重症度,予後においては2群間で有意差は認められなかった.しかし,性別においては,逆たこつぼ型はたこつぼ型に比較し有意に女性の比率が低かった(女性比率40.0% vs 84.2%, p=0.040).
【考察・結語】
従来,SAHに合併するWMAは高年期の女性に多いと報告されてきた.しかし今回,WMAをたこつぼ型と逆たこつぼ型の2パターンに分類し検討した結果,逆たこつぼ型はたこつぼ型に比較し年齢の若い中年期に多く合併し,また,女性比率は有意に低かった.WMAが高年期の女性に多く合併するメカニズムとして女性ホルモンの欠如が実証されているが,今回の結果より,たこつぼ型と逆たこつぼ型とでは発生のメカニズムが異なる可能性があり,男性ホルモンの影響も検証する必要があると考えられた.