Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
コメディカル:循環器領域

(S703)

心臓及び頚動脈超音波検査で診断し得た両側総頚動脈まで伸展した胸部大動脈解離の一例

Usefulness of cardiac and carotid ultrasonography in patient with dissecting aortic aneurysm extending to the bilateral common carotid artery

北野 貴子1, 田代 理枝1, 佐藤 幾生1, 西村 裕之2

Takako KITANO1, Rie TASHIRO1, Ikuo SATOH1, Hiroyuki NISHIMURA2

1西宮協立脳神経外科病院臨床検査科, 2西宮協立脳神経外科病院神経内科

1Department of Clinical Laboratory, Nishinomiya Kyoritsu Neurosurgical Hospital, 2Department of Neurology, Nishinomiya Kyoritsu Neurosurgical Hospital

キーワード :

【はじめに】
胸部大動脈解離は緊急手術を要する疾患である.通常,突発する胸背部痛に加え血圧の左右差などが見られる場合,胸部大動脈解離が疑われる.しかし,胸背部痛が無く意識障害や片麻痺などの神経脱落症状を呈し脳卒中が疑われる場合,病初期から胸部大動脈解離を疑い診断することは困難である.これまで胸部大動脈解離による脳梗塞発症症例のうち約10%は無痛性であると報告されており,注意喚起が促されている.今回我々は脳梗塞で発症し,心臓・頚部超音波検査にて両側総頚動脈まで伸展を認めた急性大動脈解離の一例を経験したので報告する.
【症例】
77歳 女性
【主訴】
意識障害 左片麻痺
【既往歴】
高血圧(近医で内服加療中)
【家族歴】
特記事項なし
【現病歴】
20××年3月9日検診のため某院を受診した.9時30分血圧測定中に突然意識障害が出現し,10時15分当院へ救急搬送された.10時30分の頭部CT検査で脳内出血を認めず,脳梗塞が疑われ入院した.
【嗜好歴】
アルコール(−)喫煙(−)
【来院時現症】【身体所見】
身長163cm,体重54.5kg,血圧154/86mmHg 脈拍68/min・整,体温35.0℃,頚部血管雑音聴取せず,胸腹部異常なし,足背動脈拍動良好
【神経学的所見】
意識JCS:Ⅰ−2〜3,構音障害有り,右への共同偏視を認め,顔面を含む左片麻痺(徒手筋力テストMMTで左上肢1/5,左下肢3/5レベル),また左上下肢で表在感覚鈍麻を認めた.
【血液検査所見】
血算・生化学・凝固系いずれも明らかな異常認めず.
【頭部CT所見】
early CT signを認めず.
【頭部MRI所見】
拡散強調画像(DWI)で右中大脳動脈(MCA)領域に散在性の梗塞を認める.MRAで,右内頚動脈は閉塞し右中大脳動脈(MCA)は前交通動脈(A−com)を介して対側から描出されている.
【経胸壁心臓超音波検査所見】
心機能に問題なく,心膜液や虚血所見も認めず.重度の大動脈弁閉鎖不全も認めず.上行大動脈47.6mm,下行大動脈34.7mmと共に拡大し,内腔にflap様エコー像認め,stanford A・DeBakey Ⅰ型の大動脈解離を疑った.
【頚動脈超音波検査所見】
右総頚動脈にflapを認め,内腔はもやもやエコーあり,流速は総頚動脈・内頚動脈共にto and froを示す.右椎骨動脈は逆行性である.左総頚動脈にもflapを認めるが血流は保たれている.左椎骨動脈は順行性で血流豊富である.
【胸腹部CT所見】
上行大動脈から両外腸骨動脈まで解離を認める.
【経過】
入院後,意識障害・左片麻痺の改善と増悪を示す変動が認められ,上肢血圧に左右差(右61/46mmHg,左94/45mmHg)を認めた.胸痛の既往はなかったが,胸部大動脈解離を疑い緊急心臓・頚部超音波検査と胸腹部CTを施行した.両側総頚動脈から上行大動脈〜両外腸骨まで解離を認めたため,手術適応があると判断され同日他院へ転院した.翌日3月10日に上行大動脈人工血管置換術(大動脈弁吊り上げ・右総頚動脈結紮術)が施行された.術後,意識レベル低下や神経症状の悪化はなかったが,MMTは左上下肢共に0/5レベルであり今後はリハビリ中心に行っていくこととなった.3月30日当院へ転院し状態も安定しているため,リハビリを継続する予定で4月16日他院へ転院した.
【結語】
今回,我々は脳梗塞精査目的で施行した心臓・頚部超音波検査により発見された,上行大動脈から両側総頚動脈までの解離の一例を経験した.