Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
コメディカル:基礎と血管領域

(S702)

整形外科領域における術後深部静脈血栓症の検討

The examination of the postoperative deep vein thrombosis in an orthopedics domain

竹内 寿美, 森 由美子, 辻 真一朗

Hisami TAKEUCHI, Yumiko MORI, Shinichiro TUJI

京都桂病院検査科

kensa, kyoto katsura hospital

キーワード :

【目的・対象】
当院では整形外科領域の手術において静脈血栓症予防ガイドラインを用い術前術後の下肢静脈エコー検査(以下,下肢US)を施行し深部静脈血栓症(以下DVT)のスクリーニングを行っている.今回,2008年1月〜2012年1月に施行した人工股関節置換術(以下THA)231例(男46例,女185例,平均年齢65.2歳)と人工膝関節置換術(以下TKA)126例(男20例,女106例,平均年齢74.2歳)を対象に術後DVTの発症率,発生部位,Dダイマー値(以下DD値)を後ろ向きに比較検討したので報告する.尚,ガイドラインは期間中2回の改訂があり,ガイドライン予防内容別に検討した.
【当院における静脈血栓症予防ガイドライン】
①2008年1月〜2009年1月:術前・術後1週目に下肢USとDD値測定,帰室後〜術後1日目に間歇的空気圧迫法(以下IPC)実施,術後1日目から弾性ストッキング着用 ②2009年2月〜2011年2月:①+術中健側IPC ③2011年3月〜2012年1月:②+全例ファンダパリヌクスナトリウム(商品名;アリクストラ 以下,FPX)使用
【結果Ⅰ:THA】
術後DVT発症率:17.3%(予防ガイドライン内容別①18.6%②16.2%③18.2%),DVT発生部位:患側52.5%,健側27.5%,両側20.0%・ヒラメ静脈38例/41例,膝窩静脈+ヒラメ静脈1例,膝窩静脈+後脛骨静脈+ヒラメ静脈1例,DD値:DVT陰性群5.3mg/dl,DVT陽生群8.5mg/dl(①15.2mg/dl②6.0mg/dl③6.7mg/dl) 有意差あり(p=0.006)
【結果Ⅱ:TKA】
術後DVT発症率:35.7%(ガイドライン予防内容別①36.4%②39.1%③27.6%) DVT発生部位:患側60.0%,健側17.8%,両側22.2%・ヒラメ静脈43例/45例,腓骨静脈+ヒラメ静脈1例,腓骨静脈1例,DD値:DVT陰性群9.9mg/dl,DVT陽生群13.7mg/dl(①13.8mg/dl②13.7mg/dl③13.2mg/dl) 有意差あり(p=0.004)
【考察】
整形外科手術でのDVT対策は予防と早期発見が重要と考えられている.今回の検討より術後の予防対策の改訂により若干のDVT発症率の改善が得られた.ガイドライン改訂による比較検討では①術中健側IPC導入によりTHAはDVT発症率及びDD値の減少を認めたが,TKAは改善されなかった.THA/TKAともに健側のDVT発症率は改善されなかった.②全例FPX使用後はTKAではDVT発症率は減少したがDD値の変化は認めなかった.THAでは改善は得られなかった.DVT予防の観点から,より信頼づけるガイドラインにするため,予防ガイドラインの検証・改訂を継続的に行うことが必要であると思われた.
【結論】
静脈血栓症予防ガイドライン改訂によりDVT発症率に若干の改善が得られ,術中健側IPCと全例FPXの使用は有効であると考える.DD値は血栓の有無における有意差は認めるものの,術後基準値を逸脱し高値を呈することが多くDVTの予防因子とすることは困難であった.今後もDVT予防・早期発見のため積極的に下肢USを施行する必要性が示唆された.