北川 まゆみ, 曽根原 純子, 光野 譲, 永井 優一, 井原 完有, 麻生 智彦

Mayumi KITAGAWA, Junko SONEHARA, Yuzuru KONO, Yuichi NAGAI, Kanyu IHARA, Tomohiko ASO

国立がん研究センター中央病院放射線診断

Divison of Radiological Diagnosis, National Cancer Center Hospital

キーワード :

【背景・目的】
高密度焦点式超音波治療装置（high intensity focused ultrasound : HIFU）において，超音波の出力パワーの違いや照射時間（Transmit time）および間隔時間（Interval time）によって生体への作用が異なることが考えられる．今回，公式上（計算値）においてターゲット到達エネルギーを同等とし，出力パワー，照射時間および間隔時間を変化させ，それぞれのターゲット到達温度について基礎的検証を行う．
【使用機器】
China Medical Technologies社製 HIFU装置 FEP-BY02 HIFU　GE社製 超音波診断装置 LOGIQ P5　株式会社八光製 熱電対グラフテック株式会社製 midi LOGGER GL900　OST社製ファントム
【方法】
軟部組織に近い状態の音速1540m/secに調整されたファントムを用い，計算値においてターゲット到達エネルギー（J/sopt）が同等となる，異なる焼灼条件を設定し以下の条件で測定する．①出力パワーおよびスポット回数を変化（250W×40spot，500W×20spot，1000W×10spot）②照射時間およびスポット回数を変化（250ms×40spot，500ms×20spot，1000ms×10spot））③間隔時間を変化（250ms，500ms，1000ms）
【結果】
①出力パワーが大きい程，温度上昇は顕著だった．250W×40spotでは60℃まで上昇しなかった．②1回の照射時間が長い程，温度上昇は顕著だった．250ms×40spotでは60℃まで温度上昇しなかった．③間隔時間を1/2にすることで，温度上昇は10％程度上がった．
【考察】
今回の基礎的検証では，出力パワー250Wおよび照射時間250msはターゲット到達エネルギーに関わらず，実際の治療に必要とされている最低温度（60℃）には達しなかったため焼灼条件としては不適と考える．しかしながら，出力パワーおよび照射時間を大きくすると，温度上昇も急峻となることより，実際の治療においての焼灼条件は，ターゲットの深さや部位等も考慮し，慎重に設定する必要があると考える．発表当日では，人体に近い物質を用い，ターゲット周辺の波及効果等も加えて報告する．
【結論】
今回の基礎的検証の結果から，公式上（計算値）においてターゲット到達エネルギー（J/spot）が同等であっても焼灼条件が異なるとターゲット到達温度も異なることがわかった．