Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
コメディカル:腹部と表在領域

(S697)

カテゴリー判定の乖離例の検討

Discrepancy between sonographers and doctors on categorized criteria

岩下 和広1, 御子柴 恵1, 林 克義1, 細田 哲夫1, 石川 雅英1, 水上 哲1, 宮下 昌徳1, 小松 昭彦1, 熊谷 金彦1, 岡庭 信司2

Kazuhiro IWASHITA1, Megumi MIKOSHIBA1, Katsuyoshi HAYASHI1, Tetsuo HOSODA1, Masahide ISHIKAWA1, Satoshi MIZUKAMI1, Masanori MIYASHITA1, Akihiko KOMATSU1, Kanehiko KUMAGAI1, Shinnji OKANIWA2

1飯田市立病院放射線技術科, 2飯田市立病院消化器内科

1Department of Radiological Technology, Iida Municipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Iida Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
2011年に超音波によるがん検診の精度並びに有効性の評価を目的に消化器がん検診学会より腹部超音波がん検診基準(カテゴリー分類)が公表された.
そこで,超音波担当技師(以下技師)ごとに異なっていた判断基準をカテゴリー分類に統一し,技師と超音波指導医(以下判定医)の判定結果の乖離例につき検討したので報告する.
【対象】
2011年8月〜2012年7月までの1年間における人間ドック超音波受診者1883名.
【方法】
技師と判定医のカテゴリー(以下C)の一致率,乖離例の臓器別頻度(肝臓,胆道,膵臓,腎臓,脾臓)および,乖離所見につき検討した.
【結果】
技師と判定医の判定が対象5臓器全てで一致したのは1596名(84.8%)であり,287名(293例:15.2%)に何らかの判定結果の乖離を認めた.乖離例を臓器別に見ると,肝臓96例(32.8%),脾臓79例(27.0%),胆道60例(20.5%),腎臓37例(12.6%),膵臓21例(7.2%)の順にカテゴリー判定の乖離頻度が高かった.
各臓器における乖離所見をみると,肝臓では限局性の低エコー領域(16例),高輝度肝や肝腎コントラストの見落とし(12例),高エコー腫瘤(6例)に乖離例を認めた.乖離内容は,技師が充実性病変としてC3としていた低エコー領域例を判定医が脂肪肝(限局性低脂肪域)としてC2に下げていたり,技師がマージナルストロングエコー,カメレオンサイン,ワックスアンドウェインサインなどを認めない例を経験から血管腫疑いとしてC2と判定したものを判定医がC3以上に変更していた.
脾臓では,脾門部充実性病変としてC3としたもの(69例)を判定医が副脾としてC1に下げていた.胆道では胆嚢ポリープにおける点状高エコーの見落とし(9例)と,判定医が形状を桑実状としてC2としたもの(7例)や,限局性壁肥厚の見落し(8例)が多かった.腎臓では形態異常や輪郭の凹凸・変形を判定医が正常変異としてC1としたもの(7例)や,充実性病変の輝度を中心部エコーより低エコーとした判定間違い(5例)が多かった.膵臓では嚢胞性病変の大きさ (3例)や,主膵管径(3例)の過小評価によりC2からC3に変更されている例が多かった.
乖離例を肝臓の低エコー領域や副脾などのようにC3-5がC1,2となるものと,膵臓の嚢胞性腫瘤や膵管拡張のようにC1,2がC3-5となるものに分けると,前者は54.3%,後者は16.0%認められており,前者はカテゴリー分類の特異度に後者は感度に影響すると考えられた.
【考察】
技師と判定医のカテゴリー判定において15.2%に乖離例を認め,その中の70.3%はカテゴリー分類の感度や特異度にも影響する乖離所見であった.
【結論】
カテゴリー分類を用いることにより,それまでの技師個々に任せられていた判定基準を統一することが可能となったが,判定項目によっては技師と判定医とのカテゴリー判定に乖離を生じることが明らかとなった.カテゴリー分類の普及には,判定項目の更なる改訂に加え技師に対する詳細な解説や指導が必要と思われる.