Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
コメディカル:症例

(S694)

診断に難渋した異所性子宮内膜症の一例

A Case Report of Heterotopic Endometriosis which had trouble to diagrosis

三島 里菜1, 長尾 康則1, 石原 茂秀1, 西脇 博1, 大澤 久志1, 加藤 統子1, 前野 直人1, 仲尾 洋宣1, 石川 英樹2

Rina MISHIMA1, Yasunori NAGAO1, Shigehide ISHIHARA1, Hiroshi NISHIWAKI1, Hisashi OOZAWA1, Noriko KATOU1, Naoto MAENO1, Hironobu NAKAO1, Hideki ISHIKAWA2

1公立学校共済組合東海中央病院医務局診療放射線科, 2公立学校共済組合東海中央病院消化器内視鏡センター

1Department of Radiology, Tokai Central Hospital, 2Department of Endscopy, Tokai Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
子宮内膜症は子宮内膜間質を伴う内膜腺上皮が子宮内腔面以外に存在する疾患である.骨盤内臓器,骨盤内腹膜に発生することが多いが,肺や消化管にも発生することがある.今回,臍部近く皮下に発生した異所性子宮内膜症の一例を経験したので報告する.
【症例報告】
症例は40歳代女性.16年前に帝王切開術の既往歴があり,現在,子宮内膜症,過多月経にて産婦人科通院中.家族歴は父が肺癌.半年前より下腹部にチクチクした痛みを感じ,精査目的に当院紹介受診となった.受診時の血液検査所見は,ヘモグロビン濃度10.3g/dl,TG47mg/dlと低値を認めるのみであった.腫瘍マーカーCEA 1.29ng/ml,CA 19-9 12.8U/mlと正常範囲内であった.下腹部正中に帝王切開創あり,その上部皮下に約2cmの腫瘤を触知し,同部位に一致して圧痛を認めた.嘔気,嘔吐なし.腹部超音波検査を施行したところ,帝王切開創の上方右側に腹直筋層から皮下脂肪層にかけて12×8mmの低エコー腫瘤を認めた.内部エコーは不均一で無エコーの小結節を認め,境界は不明瞭であった.圧迫による変形はなく,カラードプラにて血流は認めなかった.造影CT検査においても同部位に造影効果のある腫瘤を認めた.これらの所見より,16年前の帝王切開時の筋膜縫合糸に吸収糸が使用されたかどうか不明であり,当時使用した筋膜縫合糸の残糸による腫瘤が疑われ,全身麻酔下による開腹切除術が施行された.臍下数cmの創下やや右側に2cm程度の腫瘤を認めた.腫瘤は腹直筋層に主座があり,そこから皮下脂肪層に突出するように存在していた.病理組織学的検査では内部に陳旧化した出血・壊死成分を含み,上皮下には肉芽組織形成,内膜間質様の紡錘形細胞の集簇を認めた.免疫組織学的にCD10陽性,ER,PGR陽性を示し,Endmetriosis(子宮内膜症)と診断された.
【考察】
異所性子宮内膜症は女性の5〜15%に認められると報告されていますが,骨盤腔に最も多い.子宮内膜症の成因としては,体腔上皮説と月経血の移植説がよく知られている.本症例のように帝王切開後の腹壁創に発生する子宮内膜症は,医原性の内膜細胞の移植によると考えられる.今回,超音波検査などの画像診断では特徴的な所見がなく診断に難渋した異所性子宮内膜症の一例を経験したので報告した.