Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
コメディカル:症例

(S694)

高分解能Flow機能が胆嚢穿孔の診断に有用であった一例

A case of gallbladder perforation which was accurately diagnosed by using ultrasound combined with high definition flow imaging

舩原 晴美1, 七種 道男1, 井上 直樹2, 高森 謙一2

Harumi FUNABARA1, Michio SAIKUSA1, Naoki INOUE2, Kenichi TAKAMORI2

1地方独立行政法人北松中央病院生理検査科, 2地方独立行政法人北松中央病院消化器内科

1Physical Labolatory, Hokusho Central Hospital, 2Gastroenterology and Hepatology, Hokusho Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
高分解能Flowは従来の血流表示方法に比べ空間・時間分解能が高く,細部まで詳細に表示可能となっている.今回我々はDirectional‐eFlow(D‐eFlow)機能(日立アロカメディカル社製Prosoundα7)を用いて胆嚢穿孔と診断した症例を経験したので報告する.
【症例】
80歳女性.
【既往歴】
ANCA関連血管炎症候群・再発性胸部大動脈解離
【現病歴】
平成24年3月呼吸苦のため受診しANCA関連間質性肺炎にて入院.3月下旬に右上腹部から右下腹部にかけての疼痛が出現した.4月1日,血液検査で強い炎症反応及び軽度の肝・胆道系酵素値の上昇を認め,腹部単純CTでは胆嚢炎の疑いであった.翌日,腹部超音波検査で急性胆嚢炎・胆嚢穿孔が疑われ手術目的で転院となった.
【腹部CT所見】
胆嚢緊満があり,胆嚢炎の可能性を否定できない.明らかな結石や壁肥厚は指摘できない.
【超音波所見】
胆嚢緊満,胆泥(+),底部に低エコーの壁肥厚を認め一部菲薄化し,底部に接する腹腔内に50×13mmの無エコー帯を認めた.菲薄化部分のD‐eFlow(流速レンジ0.68m/s・フローゲイン82dB)にて底部壁菲薄化部分から腹腔内無エコー帯に呼吸性変動による胆汁の移動を示す流体シグナルを認め,胆嚢穿孔と診断した.
【手術・病理所見】
開腹した結果腹腔内膿瘍を認め,胆嚢周囲は小血管が増生し易出血性であった.病理所見は胆嚢の一部に全層性の潰瘍,一部筋層が消失し好中球を伴う浸出物があり,深部でリンパ球浸潤を認めた.漿膜下に小膿瘍形成し,漿膜面にフィブリン析出を認め,Rokitansky‐Aschoff洞や残存粘膜部には慢性炎症性細胞浸潤を認めた.漿膜側まで解離を認め胆嚢壁の穿孔が疑われた.
【考察】
本症例は,単純CTでは胆嚢の穿孔を示唆する明らかな所見は得られず,腹部超音波検査でのD‐eFlow機能を使用しリアルタイムで胆汁の漏出を描出したことにより胆嚢穿孔を診断できた症例であった.近年,デジタル処理技術の向上に伴い血流検出感度が大幅に改善され,低速から高速まで低ノイズで表示可能となっている.これらの技術の一つであるD‐eFlowは,血流の検出のみならず穿孔等に伴う内容物の流体にも有用である.