Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
コメディカル:症例

(S693)

USで退縮の経過を観察しえた特発性腸間膜血腫の1例

A case of idiopathic mesenteric hematoma followed by ultrasonography

野口 科子1, 市村 典子1, 水谷 香織1, 染谷 元樹1, 黒﨑 久恵1, 市川 めぐみ1, 五十嵐 裕章2

Shinako NOGUCHI1, Noriko ICHIMURA1, Kaori MIZUTANI1, Motoki SOMEYA1, Hisae KUROSAKI1, Megumi ICHIKAWA1, Hiroaki IGARASHI2

1河北総合病院画像診断部, 2河北総合病院消化器科

1Department of Radiology, Kawakita General Hospital, 2Department of Gastroenterology, Kawakita General Hospital

キーワード :

【はじめに】
腸間膜血腫は多くは腹部外傷に伴って発症するが,非外傷性の要因としては,血液疾患,抗凝固療法の合併症,動静脈瘤破裂などが報告されている.原因が特定できない症例は特発性とされ,稀な疾患とされている.腸間膜血腫の治療は手術適応の報告が多く,特に特発性の場合は良悪性の鑑別が困難なことがあり,診断を兼ねた手術が施行されることが多いとされている.今回,腹部超音波検査(以下US)で自然退縮の経過を追跡でき,摘出術を施行することなく治療終了となった症例を経験したので報告する.
【症例】
18歳,男性
【主訴】
腹痛,発熱
【既往歴】
アデノイド摘出
【内服薬】
なし
【現病歴】
夜からみぞおち辺りが痛み,朝になってから痛みが強くなり,それ以降は改善されなかった.発熱,頭痛を認めるが,吐気,嘔吐,下痢,咳,痰,咽頭痛は認めなかった.腹部所見は平坦・軟・臍部〜左腹部に圧痛・反跳痛を認め,筋性防御は認めなかった.胸部・腹部XPでは特記する所見はなく,初回の診察時には腹痛の原因は特定できなかった.2日後,解熱したものの腹痛が持続していたため,再度来院した.血液検査ではCRP6.74mg/dlの上昇を認めたが,貧血は認めなかった.USを施行し,痛みの部位に一致して,左下腹部に47×33×41mm大の嚢胞・充実性成分を有する腫瘤性病変が認められた.嚢胞性部分を有していたため,血腫や膿瘍が疑われた.また腫瘤周囲の脂肪組織の輝度上昇と腸間膜リンパ節の腫大が認められ,炎症の存在も示唆された.同日の腹部造影CTではUSと同部位に腫瘤像が確認でき,膿瘍やリンパ腫などの腫瘤性病変が疑われた.以上の検査結果より精査加療のため入院となった.
【経過】
入院後は,抗生物質投与とともに画像診断が行われた.腹部MRI検査が施行され,腫瘤は腸間膜に存在する血腫と診断された.血腫の原因検索のため,血管造影が施行されるも動静脈に奇形は認めず,原因不明の特発性腸間膜血腫と診断が確定された.症状は比較的軽度であったため,開腹術は施行せず,USで血腫の退縮を確認していった.入院5日めのUSでは若干の腫瘤径の縮小が認められ,全身状態も改善したため,外来での経過観察となった.退院後は定期的にUSと血液検査を施行し,徐々に径の縮小と内部エコーレベルの変化,CRPの低下を認め,約8カ月後にはほぼ消失し,CRPは正常値となったため,治療終了となった.
【考察】
特発性腸間膜血腫は摘出術が施行されることが多いが,血腫と診断が確定されれば,経過観察が可能な疾患とされている.今回の症例は,USで血腫の確定診断は出来なかったものの血腫の退縮の評価に非常に有用であったと考えられた.本疾患は40〜60歳代に発症することが多いとされているが,今回の症例は10代で発症という稀な症例であった.今後,原因不明の腹痛精査の場合,若年者であっても本疾患を念頭に置き,報告する必要があると考えられた.