Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
コメディカル:症例

(S692)

肝細胞癌との鑑別に難渋した肝細胞腺腫の一例

A case of liver cell adenoma with difficulty in ruling out well differentiated hepatocellular carcinoma

瀬音 尚美1, 中原 修2, 佐藤 真理奈1, 善福 紗季1, 太田尾 龍2, 藤村 美憲2, 中津 卓郎1, 青木 範充1

Naomi SEOTO1, Osamu NAKAHARA2, Marina SATOU1, Saki ZENFUKU1, Ryuu OOTAO2, Yoshinori FUJIMURA2, Takao NAKATU1, Norimitu AOKI1

1球磨郡公立多良木病院企業団総合健診センター, 2球磨郡公立多良木病院企業団外科

1General medical examination center, Taragi municipal hospital, 2surgery, Taragi municipal hospital

キーワード :

【はじめに】
肝細胞腺腫は欧米で多く報告されているが,わが国では稀な疾患である.今回,肝細胞癌と鑑別困難な肝細胞腺腫の一例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
【症例】
42歳 女性  月経困難症で16年間経口避妊薬の既往がある.
【現病歴】
2011年の健診腹部超音波にて,肝S8に低エコー腫瘤性病変を指摘された.当院受診し造影CTにて,血管腫と診断され経過観察となる.2012年8月の健診にて同部位の腫瘤は増大傾向を認め,セカンドオピニオン目的で他院受診.血液生化学所見に特記すべき所見なし.HBs-Ag(−),HBs-Ab(−)
【画像所見】
2011年時の腹部超音波では脂肪肝を背景に肝S8に境界明瞭なφ24mmの類円形の低エコー腫瘤を認めた.カラードップラーにて腫瘍内部に車軸状の血流シグナルを認めた.2012年8月,腫瘤はφ37mmに増大し分葉状を呈していた.カラードップラーでは辺縁に血流シグナルを認め,内部の細い血流は消失し血行動態に変化がみられた.2011年のCTでは肝S8にφ25mmの腫瘤を認め,単純で境界明瞭な低濃度領域を示し,造影直後から中心に向かって濃染し,平衡相で持続濃染した.1年後のMRIではT2強調像で肝S8にφ30×25mmの軽度高信号の腫瘤を認め,プリモビストdynamic造影で,早期に造影され,後期相では周囲の肝実質よりやや低信号を呈し,肝細胞相では取り込み低下を認め,拡散強調像で高信号を呈した.これらの画像診断にて肝細胞癌が疑われたため肝S8亜区域切除,胆嚢摘出術を施行された.組織像では腫瘍細胞は軽度の異型を伴い索状配列で出血・紫斑性変化を伴っており,類洞様血管腔が拡張し動脈増生がみられ,門脈域の介存は明らかではなった.非腫瘍部は軽度の慢性炎症性変化を伴っていた.以上よりadenomaが疑われた.免疫染色ではSAA(+),L-FABP(欠損なし),β−catenin(核陽性なし),Glutamine synthetase(−),Glypican3 (−) HSP70(−),CK7(+),KP−1(+)以上の結果から肝細胞腺腫と診断された.
【考察】
肝細胞腺腫の超音波診断の特徴として,形状は円形から類円形,境界は明瞭な腫瘤像を呈するとされている.ドプラー所見では,血流に富み腫瘍辺縁から中心に取り囲むように内部に細い血管の流入が特徴とされている.本症例の超音波検査では血流動態は車軸状に似たパターンと辺縁から取り囲むように流入した細い血流が見られ限局性結節性過形成を疑い,1年後では,内部の細い血流は消失しており,形状も分葉状に変化していたため肝細胞癌を疑い鑑別に難渋した.
【結語】
肝細胞腺腫は稀な疾患であるが,高分化型肝細胞癌,限局性結節性過形成やその他の過形成病変を的確に診断するためにもその画像的特徴を十分に理解しておくことが大切と考えられた.