Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
コメディカル:症例

(S692)

胆嚢癌との鑑別が困難であった黄色肉芽腫性胆嚢炎の一例

A Case Report of Xanthogranulomatous Cholecystitis with difficulty Carcinoma

仲尾 洋宣1, 長尾 康則1, 石原 茂秀1, 西脇 博1, 大澤 久志1, 加藤 統子1, 前野 直人1, 三島 里菜1, 石川 英樹2

Hironobu NAKAO1, Yasunori NAGAO1, Shigehide ISHIHARA1, Hiroshi NISHIWAKI1, Hisashi OOZAWA1, Noriko KATOU1, Naoto MAENO1, Rina MISHIMA1, Hideki ISHIKAWA2

1公立学校共済組合東海中央病院医務局診療放射線科, 2公立学校共済組合東海中央病院消化器内視鏡センター

1Department of Radiology, Tokai Central Hospital, 2Department of Endscopy, Tokai Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
黄色肉芽腫性胆嚢炎(Xanthogranulomatous cholecystisis以下XGC)は,胆嚢炎のなかでも比較的稀であり,胆嚢壁の著名な肥厚を伴うため胆嚢癌と類似し鑑別が困難なことが多い疾患である.今回,当院ドックにて胆石の経過観察中に胆嚢体部から底部に著名な壁肥厚を認め,胆嚢癌が否定できなかったXGCの一例を経験したので報告する.
【症例報告】
患者は50歳代の男性.2011年7月に総胆管結石にてEST治療の既往がある.家族歴は特記すべきこと無し.10年程前に胆石を指摘され当院人間ドックにて経過観察中.2012年6月の人間ドックにて胆嚢内に多数の結石と,胆嚢体部から底部に20mm程度の壁肥厚を認めた.昨年の腹部超音波検査所見と比較し著名な胆嚢肥厚を認めたため,精査目的で当院消化器内科受診となった.腹部は平坦,軟で圧痛は認めなかった.血液検査所見はCRP 0.76mg/dlと高値を認めるのみであった.腫瘍マーカーはCEA 3.1ng/ml,CA19-9 7.8U/mlと正常範囲内であった.精査時の腹部超音波検査では,胆嚢体部から底部に20mm程度の壁肥厚,内腔の狭小化,内部に結石を多数認めた.肥厚した胆嚢壁の内部エコーは,肝実質と比べ高輝度の部分と低輝度の部分が混在し不均一であった.カラードプラにて肥厚した壁内に拍動性の血流シグナルを認めた.2点にて壁血流を測定しVmax=42.7cm/s,40.0cm/sであった.ソナゾイドによる造影超音波検査では20秒後より急速に濃染された.壁内にRASと思われる無エコー域を認めた.ダイナミックCT造影検査では,体部から底部の肥厚した壁に動脈相より濃染を認めた.壁内に低吸収の結節を認めた.胆嚢壁は不整で,肝臓と胆嚢の境界も不明瞭であった.EST施行の影響と思われるpneumobiliaを認めた.ERCでは,総胆管内に透亮像を3個認めたためバスケットにて採石を施行した.ERC後の胆嚢圧迫撮影では,胆嚢内に透亮像を認めた.胆嚢壁は整であった.これらの所見よりXGCもしくは慢性胆嚢炎を強く疑ったが,胆嚢癌を完全に否定できず開腹胆嚢摘出術となった.胆嚢周囲に大網,横行結腸が強固に癒着していた.胆嚢全体に強度の壁肥厚を認めた.悪性像は認めなかった.病理組織学的検査では,胆嚢底部を中心として高度の壁肥厚を認め,底部にはAdenomyomatosisが認められ,Xanthogranulorな炎症細胞浸潤を認めXGCと診断された.
【考察】
XGCは比較的稀な症例であり,胆嚢全摘出例の約1.8〜4.7%に認められたと報告されている.また,胆嚢癌の合併率も高くXGCの6.8〜15%に胆嚢癌を合併すると報告されている.XGCは胆嚢壁内に脂肪沈着を伴う胆嚢炎であり,発生機序,病理学的所見から様々な特徴的な画像所見が報告されているが,胆嚢癌との鑑別診断に苦慮することが多々ある症例である.本症例においても超音波検査,ダイナミックCT造影検査にて胆嚢壁内にRASを認め,ERC後の胆嚢圧迫像においても胆嚢壁が整であったことからXGCを強く疑ったが,胆嚢壁血流が42.7cm/sであったこと,ダイナミックCT造影検査にて胆嚢壁が不整で肝臓と胆嚢の境界が不明瞭であったことから胆嚢癌を完全に否定することができなかった.炎症の寛解に伴って壁血流の流速が低下する傾向があるとの報告があるため,異なる時期にVmaxを再検査することにより,胆嚢癌との鑑別診断の精度が向上する可能性があると考えられる.XGCでは癌の合併を念頭に入れ慎重に診断することが重要である.