Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
頭頸部:頭頸部

(S689)

両側椎骨動脈平均血流速度の低下と脳底動脈狭窄の関連

Relationship between vertebral artery mean velocity and basilar artery stenosis

岡村 穏1, 岡部 龍太1, 2, 竹川 英宏1, 豊田 茂3, 鈴木 圭輔4, 山本 真也1, 平田 幸一4, 髙田 悦雄5

Madoka OKAMURA1, Ryuta OKABE1, 2, Hidehiro TAKEKAWA1, Shigeru TOYODA3, Keisuke SUZUKI4, Shinya YAMAMOTO1, Koichi HIRATA4, Etsuo TAKADA5

1獨協医科大学神経内科脳卒中部門, 2公立阿伎留医療センター内科, 3獨協医科大学心臓・血管内科, 4獨協医科大学神経内科, 5獨協医科大学超音波センター

1Stroke Division, Neurology, Dokkyo Medical University, 2Internal Medicine, Akiru Municipal Medical Center, 3Cardiovascular Medicine, Dokkyo Medical University, 4Neurology, Dokkyo Medical University, 5Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University

キーワード :

【目的】
頸動脈超音波図における椎骨動脈(vertebral artery:VA)の閉塞,狭窄診断は,血流速度や血管径を使用した診断基準が多用されている.拡張期血流速度が消失していた場合,同側VAの後下小脳動脈前の閉塞(PICA前閉塞)が疑われ,片側VAの平均血流速度が18cm/sec未満であった場合,さらにその左右比や血管径の左右比によって,PICA後閉塞や低形成を含むPICA-endと閉塞機転が推測される.しかし,実際の臨床の場において,両側VAの平均血流速度が低下している症例は少数存在し,この診断基準には当てはまらない.また,両側VAの平均血流速度が18cm/sec未満例における詳細な検討はこれまで報告されていないため,われわれは,ドプラ法で両側VAの平均血流速度が18cm/s未満となった症例を対象に,脳底動脈(basilar artery:BA)狭窄および閉塞の有無について比較したので報告する.
【方法】
頸動脈超音波検査はTOSHIBA製SSA-770Aを用い,中心周波数7.5MHzのリニア型探触子を使用した.VAは第5,第6頸椎間で血流速度を計測し,パルスドプラ法で両側VAの平均血流速度が18cm/s未満の60症例を対象とした.また,同患者のMRI,MR angiography(MRA),脳血管撮像(cerebral digital subtraction angiography:DSA)にて脳底動脈の狭窄・閉塞診断を行った.また,BAに狭窄や閉塞が存在する例と,認めない例をMann-Whitney U検定を使用し両群の比較を行った.なお本研究は,当施設の研究倫理指針に基づき施行した.
【結果】
対象の平均年齢は74.7歳で,基礎疾患は,脳梗塞34例,脳出血3例,その他はスクリーニング目的であった.MRAでは60症例中,19症例にBAの狭窄や閉塞を認めた(31.6%).DSAを施行した13例では7例にBA狭窄を認め(53%),1例は閉塞していた.今回,MRAでは明らかな狭窄を認めなかったものの,DSAにて狭窄が確認された例が1例あった.全体では,60例のうち20例(33.3%)に狭窄を認めた.また,BAに狭窄や閉塞を認めた群の平均血流速度は12.4cm/secと,認めなかった群の14.7cm/secと比較し,有意に低下していた(p<0.01).
【考察】
BA閉塞とVA血流波形に相関がないとする報告もあるが,本検討結果では,両側平均血流速度の低下とBA狭窄の関連性が示唆された.今後,症例の蓄積と詳細な検討が望まれた.
【結語】
両側VAの平均血流速度の低下が脳底動脈狭窄診断の一助となる可能性が示唆された.