櫻井 健一^{1, 2}, 藤﨑 滋², 長島 沙樹^{1, 2}, 鈴木 周平^{1, 2}, 原 由起子^{1, 2}, 前田 哲代^{1, 2}, 平野 智寛¹, 榎本 克久¹, 谷 眞弓¹, 天野 定雄¹

Kenichi SAKURAI^{1, 2}, Shigeru FUJISAKI², Saki NAGASHIMA^{1, 2}, Shyuhei SUZUKI^{1, 2}, Yukiko HARA^{1, 2}, Tetsuyo MAEDA^{1, 2}, Tomohiro HIRANO¹, Katsuhisa ENOMOTO¹, Mayumi TANI¹, Sadao AMANO¹

¹日本大学医学部外科学系乳腺内分泌外科分野, ²医療法人社団藤﨑病院外科

¹Division of Breast and Endocrine Surgery, Department of Surgery, Nihon University School of Medicine, ²Department of Surgery, Fujisaki Hospital

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乳腺繊維腺腫は良性腫瘍であるが，腫瘍径が小さいと画像診断で葉状腫瘍や粘液癌との鑑別を要すことが多い．われわれは乳腺繊維腺腫切除後5年目に切除部近傍から発生したと思われる葉状腫瘍の1例を経験し，経過観察の期間やfollow upの重要性を考えさせられたので報告する．
症例は41歳女性．5年前に左乳房C領域の腫瘤を主訴に来院．超音波検査で直径24mmの多結節性の腫瘤を認め，画像診断上葉状腫瘍が否定できなかったため，摘出生検術が施行された．病理組織診断は繊維腺腫であり，切除断端は一部陽性であった．その後1年に一回，新規病変の検索のため近医を検査に訪れていたが，5年目の検査で前回切除部の瘢痕部に一致して31x25mm大の境界明瞭な低エコー腫瘤が認められた．針生検を施行したところ，病理組織診断は中間度悪性群の葉状腫瘍であった．術前諸検査の後，局所麻酔下内視鏡補助下葉状腫瘍切除術（margin 5 mm）を施行し，術後経過良好にて第1病日に退院した．病理組織診断は葉状腫瘍（良性），切除断端は陰性であった．術後1年目の現在，再発の所見を認めていない．5年前に摘出した繊維腺腫の病理組織所見をもう一度検索したが，当時の切除検体に葉状腫瘍の所見はなかった．繊維腺腫は良性腫瘍であり，切除後に再発を探索するために定期的にfollow upすることは，あまり必要とされない．良性腫瘍の摘出後に超音波検査で経過を観察する場合，摘出後の組織修復の結果，摘出部位の構築が乱れていることもあり，同部に一致した新規の腫瘍の発見が遅れることがある．摘出部位近傍の新規腫瘍の出現を念頭において，注意深く観察する必要があると考えられた．