Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
腎泌尿器:腎泌尿器

(S677)

腹部超音波検査が診断に有用であった感染性腎嚢胞自然破裂の1例

Abdominal Ultrasound was useful for Diagnosis of Spontaneous Rupure of Infectious Renal Cyst

手嶋 敏裕1, 長崎 洋司2, 秋吉 彩1, 山口 みのり1, 宮地 由美子1, 横田 真弓1, 松浦 由布子3, 岡本 大祐3, 松本 俊一3

Toshihiro TESHIMA1, Youji NAGASAKI2, Aya AKIYOSHI1, Minori YAMAGUCHI1, Yumiko MIYACHI1, Mayumi YOKOTA1, Yuko MATSUURA3, Daisuke OKAMOTO3, Syunichi MATSUMOTO3

1福岡県済生会福岡総合病院検査部, 2福岡県済生会福岡総合病院内科, 3福岡県済生会福岡総合病院放射線科

1Clinical Laboratory Department, Saiseikai Hukuoka General Hospital, 2Internal Medicine, Saiseikai Hukuoka General Hospital, 3The Department of Radiology, Saiseikai Hukuoka General Hospital

キーワード :

【症例】
25歳,女性 
【主訴】
発熱,右側腹部痛
【現病歴】
20××年9月に微熱と排尿時痛が出現したため近医を受診し,検尿で膀胱炎が疑われ抗菌薬の投薬を受けた.しかし,症状改善しないため同院を再度受診した.血液検査にて炎症反応が上昇していたため,再度抗菌薬の投与を受けたが,翌朝になって右側腹部痛が増強してきたため当院救急搬入となった.
【入院後経過】
入院時,右側腹部痛に圧痛および反跳痛,右肋骨脊椎角の叩打痛を認めた.尿所見では既に抗菌薬が投与されていた影響で起因菌は同定できなかった.体幹部CTでは右腎が腫大し,上極には石灰化を伴う嚢胞性腫瘤を認め,嚢胞感染などが考えられた.よって右腎腎盂腎炎と考え抗菌薬を用いた加療を行った.しかし,疼痛が腹部全体に広がってきたため,腎盂腎炎だけでは説明がつかず,腹部エコー検査を施行した.右腎上極から中極は腫大しており,特にモリソン窩に薄い液貯留を認めた.上極の嚢胞は液貯留と交通し,緊満に乏しい印象で,嚢胞破裂を疑った.破裂の原因について外傷性のものか,腎炎に伴い嚢胞壁が破綻したのか鑑別は困難であった.その後MRI検査にて右腎嚢胞出血および破裂が確認され,血腫は腎繊維被膜を超えて腎周囲腔に及んでいた.その所見をもとに抗菌薬治療を継続し,同時に止血剤の投与や疼痛コントロールも行ったところ,第3病日には徐々に症状が改善してきた.腹部超音波検査で右腎を注意深く経過観察した.第9病日には全身状態良好だったため,内服抗菌薬を継続し退院した.
【考察】
腎嚢胞破裂は成因により自然破裂と外傷性破裂に分類される.自然破裂の原因として嚢胞内感染による嚢胞内圧の上昇と周囲組織の脆弱化,腫瘍,結石合併による嚢胞内圧の上昇に伴うものと報告されている.本症例は腎盂腎炎から嚢胞感染を来たし,その後嚢胞が破裂し,腎繊維被膜を超えて腎周囲腔へ血腫を形成したと考えられた.非常に薄い嚢胞の被膜と液貯留や腎被膜の関係を描出しえる腹部超音波検査は,その診断過程の一助として,非常に重要であった.