Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科:症例Ⅱ

(S671)

術前診断に苦慮した卵巣粘液性境界悪性腫瘍の一例

A case of mucinous borderline tumor of the ovary with difficulty in preoperative diagnosis

梶村 慈, 河野 通晴, 松本 亜由美, 松脇 隆博, 増崎 英明

Itsuki KAJIMURA, Mitiharu KOUNO, Ayumi MATSUMOTO, Takahiro MATSUWAKI, Hideaki MASUZAKI

長崎大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Nagasaki University

キーワード :

上皮性境界悪性腫瘍は全卵巣腫瘍の9%を占め,予後は比較的良好である.若年発症例が多く,妊孕性温存治療が可能な場合があり,慎重な診断および治療選択が重要である.今回私どもは術前診断および治療方法の選択に苦慮した若年発症の卵巣粘液性境界悪性腫瘍の一例を経験したので報告する.症例は23歳の未産婦.既往歴に特記事項はない.下腹部違和感を主訴に近医を受診し,卵巣出血を疑われ当科を紹介された.経腟超音波検査では腹腔内に低輝度のエコーフリースペースを認め,多量の腹水貯留を疑われた.また,左卵巣に有茎性に発育する5cm大の一部血流を伴った充実性腫瘤を認めた.骨盤MRI検査では左卵巣腫瘍(硬化性間質腫瘍)が疑われた.血清CA125値491 U/ml,CA19-9値4,605U/ml,CEA値37.5ng/mlと腫瘍マーカーの上昇を認めた.全身検索を施行したが転移性卵巣腫瘍を疑う原発巣は認められなかった.原発性卵巣腫瘍(悪性疑い)の診断で開腹付属器摘出術を予定した.2週間後に経腟超音波を施行したところ,腫瘤の増大および腹水の増加を認めた.造影MRI検査では,左卵巣を取り囲むように腫瘤が発育しており,ダグラス窩には造影効果を伴う結節性病変を数ヵ所に認め,腹膜播種が疑われた.腫瘤は造影後のT1強調画像で異常高信号を呈し,内部にT2強調画像で樹枝状の低信号域を伴う所見から漿液性境界悪性腫瘍が疑われた.妊孕性温存を強く希望したため,術中所見で術式を決定する方針とし,開腹手術を施行した.多量の粘液性腹水,左卵巣から外向性に発育する腫瘤,ダグラス窩およびレチウス窩に最大2cmの腫瘤性病変を認めた.術中迅速病理検査では境界悪性以上の粘液性腫瘍の診断であった.妊孕性温存のため左付属器摘出,腹膜播種病変摘出および大網切除術を施行した.術後病理診断は内頸部型粘液性境界悪性腫瘍,播種病変は非浸潤性のインプラントであり,進行期はstageⅢc期であった.術後は追加治療を施行せず経過観察しているが,術後10ヶ月の時点で再発は認められていない.