Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科:胎盤異常・分娩

(S670)

頸管胎盤の3例

Three case of cervical placenta

井上 万里子1, 尾本 暁子1, 加来 博志1, 2, 真田 道夫1, 岡山 潤1, 森本 沙知1, 中田 恵美里1, 鶴岡 信栄1, 3, 田中 宏一1, 生水 真紀夫1

Mariko INOUE1, Akiko OMOTO1, Hiroshi KAKU1, 2, Michio SANADA1, Jun OKAYAMA1, Sachi MORIMOTO1, Emiri NAKADA1, Nobuhide TSURUOKA1, 3, Hirokazu TANAKA1, Makio SHOZU1

1千葉大学医学部附属病院周産期母性科, 2都賀レディースクリニック産科, 3有秋台医院産科

1Maternal Fetal Medicine, Chiba University Hospital, 2Obstetrics, Tsuga Ladies’ Clinic, 3Obstetrics, Yushudai Clinic

キーワード :

【はじめに】
頸管胎盤は胎盤の一部が子宮頸管に付着している病態である.頸管胎盤は癒着胎盤となりやすく,帝王切開術中の大量出血や子宮摘出のリスクが高い.また,本症における子宮摘出は血流が豊富で腫大した子宮頸部の切除が必要なため,通常のポロー手術に比べて難易度が高い.術前診断はこれらに対する準備を可能とする点で有用である.今回われわれは妊娠中に頸管胎盤と診断し,帝王切開後に癒着胎盤のため子宮摘出に至った症例を経験したので報告する.
【症例1】
42歳,4経妊0経産,自然妊娠.流産手術3回既往.妊娠22週,全前置胎盤の疑いで当院紹介受診.超音波検査にて頸管筋層と胎盤の境界が不明瞭であり,胎盤内にlacunaを多数認めた.周囲は血流が豊富であり,頸管短縮も認め,頸管胎盤と診断した.妊娠24週より性器出血が持続したため管理入院とし,自己血を600ml貯血.妊娠34週出血の増量を認めたため,緊急帝王切開術を施行した.患者の子宮温存希望が強かったため,胎盤用手離を試みたが,胎盤の癒着が強固であり,一部が残存した.その時点で出血のコントロールが困難であったため,単純子宮全摘出術を施行.出血は4280gで,自己血600mlの他,RCC 8U,FFP 6Uを輸血した.病理ではplacenta accretaと診断された.
【症例2】
39歳,4経妊1経産,自然妊娠.流産手術2回,帝王切開術1回既往.妊娠33週,全前置胎盤・癒着胎盤の疑いで当院紹介受診.超音波検査にて頸管筋層と胎盤の境界は不明瞭で,胎盤内にlacunaを多数認めた.また,前回帝王切開創部から頸部までの筋層は菲薄化しており,同部位の子宮筋層と胎盤の境界は不明瞭であった.頸管胎盤/癒着胎盤と診断し,妊娠33週から管理入院,自己血を900ml貯血.妊娠37週,大動脈バルーンカテーテルを挿入後,選択的帝王切開術を施行した.術中超音波で胎盤の位置を確認し,胎盤を避けて子宮体下部左側をJ時切開とした.児娩出後,胎盤離兆候を認めず,子宮全摘術を施行した.出血量は3930gであり,自己血900mlを返血した.病理ではplacenta incretaと診断された.
【症例3】
37歳,1経妊0経産,自然妊娠.人工授精の既往あり.妊娠28週,全前置胎盤の疑いで当院紹介受診.超音波検査にて子宮頸部の一部が胎盤で置換されており,胎盤と頸管筋層の境界は不明瞭であった.また,胎盤内にはlacunaを多数認めた.周囲は血流が豊富であり,頸管は短縮していた.体下部の子宮筋層と胎盤の境界も一部不明瞭であり,頸管胎盤/癒着胎盤と診断した.妊娠29週から管理入院とし,自己血を900ml貯血.妊娠36週,大動脈バルーンカテーテルを挿入後,選択的帝王切開術を施行した.底部横切開にて児を娩出し,胎盤離兆候を認めなかったため連続して子宮全摘術を施行した.出血量は2535gであり,自己血300mlを返血した.病理ではplacenta incretaと診断された.
【考察】
いずれの症例も前置胎盤として紹介されたが,頸管の一部が胎盤で置換されており,かつ境界が不明瞭である・胎盤内にlacunaを多数認める・子宮頸管が短縮している・子宮頸管の血流が豊富であるなどの所見を複数認め,頸管胎盤/癒着胎盤と術前診断された.そのため「自己血貯血」「大動脈バルーンカテーテル挿入」「不用意な胎盤用手離を行わず,子宮全摘術に移行する」などの対応が可能となり,術中の出血量・輸血量の減少につながったと考えられる.