Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科:胎盤異常・分娩

(S669)

低置胎盤に関する検討

Study of Low lying placetna

吉田 敦, 長谷川 ゆり, 築山 尚史, 東島 愛, 三浦 生子, 増崎 雅子, 三浦 清徳, 増崎 英明

Atsushi YOSHIDA, Yuri HASEGAWA, Takashi TSUKIYAMA, Ai HIGASHIJIMA, Shoko MIURA, Masako MASUZAKI, Kiyonori MIURA, Hideaki MASUZAKI

長崎大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Nagasaki university

キーワード :

【はじめに】
低置胎盤は,前置胎盤と同様,分娩時に大量出血を来す事があり,慎重な周産期管理を必要とする.産婦人科診療ガイドライン産科編にも,2008年版よりCQとして低置胎盤の診断・管理が取り上げられており,「妊娠36〜37週時,胎盤辺縁が内子宮口から2cm以内の場合には帝王切開も考慮される」と記載されている.これもあって,近年経腟分娩ではなく帝王切開術が選択される例が増加している.しかしながら,低置胎盤で例え分娩中に出血があっても,分娩が進行して児頭が下降するに伴い止血し,経腟分娩できる例もあり,症例を選択すれば経腟分娩は不可能とはいえない.また,胎盤下縁が内子宮口から離れれば離れているほど分娩時出血が減少するとの報告や,10mm以上離れていれば経腟分娩可能との報告もみられる.今回,当科で管理した低置胎盤ついて調査し,経腟分娩可能な条件を特定できるか否かについて検討した.
【対象と方法】
2003年1月より2012年12月まで長崎大学病院で管理し,分娩に至った2,718例のうち,分娩直近の経腟超音波で内子宮口から胎盤下縁までの距離が20mm以下であった低置胎盤36例を対象とした.分娩方法,帝王切開術を選択した理由,胎盤下縁から内子宮口までの距離,分娩時出血量について検討した.結果:低置胎盤36例のうち,2008年4月の産婦人科診療ガイドライン産科編2008発刊以降3年半(調査全体の35%の期間)における症例が22例(61%)あり,そのうち17例(83%)が低置胎盤ないし前置胎盤の管理目的で紹介されていた.36例中貧血が改善しなかった2例,救急搬送ないし妊娠後期に紹介された10例を除いた24例で自己血が貯血されていた.24例(67%)で輸血を行ったが,22例は自己血輸血のみで,同種血輸血を必要とした症例は2例のみであった.分娩方法は,36例中経腟分娩を試みたものが10例(28%)で,うち9例が経腟分娩可能であった.分娩途中で緊急帝王切開術を行った1例は,分娩中に常位胎盤早期剥離を起こした例であった.帝王切開術を選択した理由として,骨盤位の1例,反復帝王切開の3例,出血のため緊急搬送された3例以外の18例は,主治医の説明を聞いた上で患者が帝王切開術を選択したものであった.分娩時出血量は平均1,548g (316g〜3,000g)であり,帝王切開群では平均1,691g (210g〜3,000g),経腟分娩群では1,172g (316g〜2,920g)であった.いずれの群も,同時期の常位胎盤でのそれと比較して多量であった.子宮口から胎盤下縁までの距離は,帝王切開群では10.2mm (0mm〜20mm),経腟分娩群は15.7mm (0mm〜20mm)であり,経腟分娩群で有意に長かった.また,経腟分娩群は,1例を除き全例が15mm以上離れていた.
【考察】
産婦人科診療ガイドライン産科編が発刊されてから,低置胎盤はハイリスク妊娠であるとの認識が高まり,高次病院へ紹介されるケースが増えている.低置胎盤は,経腟分娩か帝王切開術のいずれを選択しても,分娩時の出血量は常位胎盤と比較して有意に多量であったが,自己血貯血していれば大部分の例で同種血輸血は不要であった.経腟分娩群で子宮口から胎盤下縁までの距離が有意に長かったのは,主治医が分娩方法選択に関する説明をする際に,距離が長いほど経腟分娩を薦める説明をしたためと推定された.また,今回の検討から,内子宮口から胎盤下縁までの距離が少なくとも15mm以上離れていれば,経腟分娩は十分可能であると考えられた.