Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科:症例Ⅰ

(S667)

男児に繰り返した胎児水頭症の一例

A case of congenital hydrocephalus

田口 彰則1, 篠塚 憲男1, 2, 太田 寛1, 土井 裕美1, 林 崇1, 藤井 和之1, 堀 慎一1, 瀬戸 裕1

Akinori TAGUCHI1, Norio SHINOZUKA1, 2, Kan OOTA1, Hiromi DOI1, Takashi HAYASHI1, Kazuyuki FUZII1, Shinichi HORI1, Hiroshi SETO1

1瀬戸病院産婦人科, 2胎児医学研究所産婦人科

1OB/GY, Seto Hospital, 2OB/GY, Laboratory for Fetal Medicine Research

キーワード :

【はじめに】
胎児超音波技術の進歩により,胎児水頭症が妊娠早期から発見されるようになってきた.胎児水頭症の原因は様々であるが,臨床上その原因の特定が困難であることも多い.今回,胎児水頭症を反復した症例を経験し,原因検索に難渋する症例を経験したので報告する.
【症例】
37歳,4回経妊2回経産.家族歴,既往歴に特記すべきことなし.血族結婚なし.第一子妊娠は31歳時,妊娠分娩経過は良好で,妊娠38週3日に2552gの女児を経腟分娩した.発育・発達に異常を認めない.第二子妊娠は34歳時,妊娠12週までの経過に異常は認められなかったが,妊娠16週の定期健診にて胎児水頭症の所見が指摘されたため,妊娠17週3日に精査となった.超音波検査では両側側脳室・第三脳室に著名な拡大を認めたが,画像上は男児でその他に明らかな胎児異常は認めなかった.母体のトキソプラズマやサイトメガロウイルス抗体は陰性であった.本人,家族に所見の説明を行ったところ,中絶を希望され,妊娠18週4日に分娩となった.児は175g,男児,外表上明らかな異常を認めなかった.第三子妊娠は35歳時,妊娠12週までの経過に異常は認められなかったが,妊娠16週の定期健診にて胎児水頭症の所見が認められ,妊娠17週2日に精査となった.超音波所見は前回妊娠と同様に拡大する両側側脳室と第三脳室が認められた.画像上は男児であり,その他に明らかな異常を認めなかった.本人,家族に説明し中絶の選択となったが,相談の上,POCを行うこととなった.妊娠17週4日に分娩となり児は164g,男児であった.外表上の異常は認めず,胎盤からの染色体検査が行われたが,生育が不十分とのことで結果が出なかった.男児に続く水頭症のため遺伝カウンセリングが行われ,L1CAM遺伝子異常を疑い,母体の遺伝子検査を施行するも変異の確認は出来なかった.第四子は37歳時,自然妊娠.初期からの異常を認めず,経過良好であった.妊娠39週6日に経腟分娩となり,児は3120g 男児,明らかな異常を認めなかった.
【考察】
先天水頭症は出生10000人あたり6.3人と少なくなく,胎内で発見されることも多くなってきた.今回は脳室拡大が主な所見で,男児に繰り返すことからL1CAM遺伝子異常を疑ったが,児の検索が上手くいかず,保因者診断も変異が確認出来なかった.今後の妊娠を検討する上でも,十分なカウンセリングが重要である.