Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
消化器:胆・門脈Ⅱ

(S664)

心エコー検査で“Aquarium sign”を認めた門脈ガス血症の1例

Aquarium sign on echocardiography in portal venous gas; A case report

杉本 博行1, 菱田 光洋1, 猪川 祥邦1, 高見 秀樹1, 丹羽 由紀子1, 田中 千恵1, 竹下 享典2, 伊藤 理恵子3, 小寺 泰弘1

Hiroyuki SUGIMOTO1, Mitsuhiro HISHIDA1, Yoshikuni INOKAWA1, Hideki TAKAMI1, Yukiko NIWA1, Chie TANAKA1, Kyosuke TAKESHITA2, Rieko ITO3, Yasuhiro KODERA1

1名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学, 2名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学, 3名古屋大学医学部付属病院医療技術部臨床検査部門

1Department of Gastroenterological Surgery, Nagoya University Graduate School of Medicine, 2Department of Cardiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 3Department of Clinical Laboratory, Nagoya University Hospital

キーワード :

【はじめに】
門脈ガス血症は腸管壊死などの重篤な疾患に伴って門脈内にガスの存在を認める予後不良の徴候とされる.今回,心エコー検査で特徴的な画像所見を認めた門脈ガス血症の1例を経験したので報告する.
【症例】
77歳女性.慢性関節リウマチ,腎アミロイドーシス,末期腎不全,維持透析で当院通院中,MRSA敗血症のため2012年4月入院,抗菌剤治療にて状態改善するも,全身状態不良のため長期入院中であった.2012年8月,透析中に血圧低下あり,その後嘔吐および軽度の腹痛を認めた.透析後に定期の心エコーが予定されていたため施行したところ,右房から右室へ流出する多発点状高エコー像“Aquarium sign”を認めた.透析用シャントからの空気混入が疑われたが,全身状態は安定しており経過観察とした.しかし腹痛は持続し,定期血液検査所見で著明な肝機能障害および白血球の上昇を認めた.腹部超音波検査を行ったところ肝実質に多発する点状高エコー像を認めた.また門脈内を流れる点状高エコー像も認めた.さらにColor Dopplerでは火焔状の血流シグナル“Flaming portal vein sign”を認め門脈ガス血症と容易に診断できた.造影CT検査では肝表面近くに樹脂状のガス像を認め,また門脈ガス像の分布する領域と一致して肝実質が造影不良域として描出された.また上行結腸の腸管壁肥厚および壁内ガスを認めた.以上の結果から虚血性腸炎,腸管気腫症に併発した門脈ガス血症と診断した.手術適応を考慮したが,末期腎不全患者であることや腹膜炎所見を認めなかったことから保存的治療とした.3日後のCTでは門脈ガスは消失し,自覚症状も軽快した.発症13日目より経口摂取可能となった.
【考察】
2006年,Aghasadeghiらは食道心房瘻患者の心エコー検査で,左心房内に気泡が浮かび上がっていく様子を認めたことを報告し,水族館に浮遊する泡に似ていることからこの所見を“Aquarium sign”と命名した1).2008年にはProvidenciaらが敗血症患者に合併したと報告し2),また2012年にはSinghらが門脈ガス血症の患者にAquarium signを認めたと報告した3).今回の症例では透析後の心エコー検査であり,Aquarium signを認めたものの当初はシャントからの空気の迷入を疑ったが,門脈ガス血症に伴う“Aquarium sign”であったものと思われる.門脈ガス血症に伴うこの所見は検索した限りでは2例目,本邦では初の報告である.腹部超音波検査では,これまで報告された特徴的な画像がBモード,FFT解析ともに認められ,また伊集院らが報告4)したカラードプラの極めて特徴的な画像所見である“Flaming portal vein sign”も認め門脈ガス血症の診断は容易であった.
【結語】
門脈ガス血症は早期診断とともに,厳重な経過観察が必要であることも多く,ベッドサイドで繰り返し施行できる超音波検査で診断することは重要であり,今回報告したような特徴的な超音波所見を認識しておくことは重要である.
【文献】
1)Aghasadeghi K, Aslani A. Aquarium sign in the left atrium. Cardiology. 2007; 107: 411.
2)Providncia RA, Mota P, Quintal N, Quintal I, Leitao-Marques AM. Aquarium sign in sepsis. Eur J Echocardiogr. 2008; 9: 336-7.
3)Singh UN, Kapoor A, Aggarwal A, Kumar S, Poddar U. Hepatic portal venous gas and “the aquarium sign” due to intussusception in kawasaki disease. Echocardiography. 2012; 29: E201-3.
4)Ijuin H, Tokitoku D, Atsuchi Y, Kosaihira T, Nagamine M, Kozaki K, et al. Flaming portal vein as a new color Doppler sign of portal gas: report of two cases. J Med Ultrasonics 2008; 35:119123