Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
消化器:胆・門脈Ⅰ

(S662)

超音波内視鏡が深達度診断に有用であった胆嚢癌の2例

Gallbladoler carcinoma: report of two cases

大塚 裕之, 森島 大雅, 石川 英樹

Hiroyuki OTSUKA, Tomomasa MORISHIMA, Hideki ISHIKAWA

公立学校共済組合東海中央病院消化器内視鏡センター

Department of Digestive Endoscopy, Tokai Central Hospital of the Mutual Aid Association of Public School Teachers

キーワード :

【症例1】
73歳女性.主訴:精査目的.既往歴:胃癌(幽門側胃切除術+BⅠ再建),糖尿病,高脂血症.現病歴:近医でエコー施行.胆嚢腫瘤を指摘され中核病院を紹介受診.US, CT, MRCP 施行.胆嚢体部腹腔側に18mm大の隆起性腫瘍を認め,胆嚢癌疑いで手術予定となる.当院での手術を希望され当院外科紹介受診.精査目的で消化器内科受診.入院時血液生化学検査:CEA 1.61ng/ml, CA19-9 7.9U/ml.画像検査: EUSでは胆嚢体部腹腔側に辺縁不整な広基性の隆起性病変あり,内部エコーは不均一で第3層は途絶しており,SS以深の深達度と診断した.術式:拡大胆嚢摘出(肝床切除)+肝外胆管切除術.病理診断:Gall bladder cancer 平坦浸潤型,5×5cm, tub1, int, INFγ, ly1, v1, pn0, se, s(+), pHinf0, pBinf0, pPV0, pA0, pBM0, pEM0であった.
【症例2】
74歳女性.主訴:腹痛.既往歴:虫垂炎,卵巣のう腫,パーキンソン病.現病歴:腹痛あり近医受診.エコーで胆嚢内に不明瞭な陰影を認め,胆泥疑いで当院消化器内科を紹介受診.入院時血液生化学検査: CEA 1.15ng/ml, CA19-9 44.7U/ml.画像検査: USでは胆泥を認めた.Dynamic CTでは胆嚢底部に胆泥,胆嚢底部と頸部の腫瘍に造影効果を認めた.造影USでは胆嚢頸部と底部の腫瘤は血流あり染影された.EUSでは胆嚢頸部に広基性で表面不整,内部不均一な結節状の腫瘍あり.最深部の胆嚢壁の第3層は一部菲薄化あり,深達度はssと診断し,胆嚢底部の腫瘤は胆嚢壁の第3層の菲薄化あり深達度ssと診断した.術式:胆嚢床切除術+肝外胆管切除術.病理診断:Gall bladder cancer #1; Gn, hep, 正常型,乳頭膨張型 4.5×4.5cm, tub1>pap, med, INFβ, ly0, v0, pn0, ss, s(-), pHinf0, pBinf0, pPV0, pA0, #2; Gn, perit, 正常型,結節浸潤型,2.0×2.0cm, pap>tub2, med, INFβ, ly1, v0, pn1, ss, s(-), pHinf0, pBinf0, pPV0, pA0, pN0, pBM0, pHM0, pEM0であった.
【考察】
胆嚢は他の消化管と異なり組織学的に粘膜筋板を欠き,固有筋層も非常に薄く粗なために癌は容易に漿膜下層に浸潤する.胆嚢の漿膜下層には血管やリンパ管が豊富に存在するため,ひとたび癌が浸潤するとリンパ行性や血行性転移を来たしやすいという特徴がある.癌が粘膜層(m),粘膜固有筋層(mp)までにとどまる早期胆嚢癌(pT1)症例では基本的にリンパ節転移は無いといわれており,単純胆嚢摘出術のみで根治が可能である.一方,癌の浸潤がmpを超えて漿膜下層(ss)に及ぶと脈管浸潤の頻度が高率となり,半数以上の症例でリンパ節転移がみられる.ss浸潤癌の5年生存率も治癒切除が非治癒切除かで差はあるものの,30-70%程度と報告されている.一般的に深達度ss以深(pT2, 3, 4)の症例では,腫瘍の占拠部位によっても異なるが,胆嚢摘術,胆嚢全層切除術といった局所切除に加え,リンパ節郭清を含めた胆管切除や肝切除,膵頭十二指腸切除などが必要になってくる.以上のように,癌の壁深達度を評価することは術式決定を行う上で非常に重要である.US,EUSといった超音波検査は胆嚢癌の肉眼形態をよく反映した画像を提供し,特に後者では精度の高い壁深達度診断が可能である.
【まとめ】
本症例での深達度診断について(EUS診断:病理組織診断)と表記すると,(ss以深:se),(ss:ss),と2例共にEUSで正診可能であった.今回,EUSによって深達度を正しく診断することにより,適切な術式を選択可能であったと考えられる.症例1では術後19ヶ月,症例2では術後10ヶ月が経過しているが,再発なく生存している.
【結語】
超音波内視鏡が深達度診断に有用であった胆嚢癌の2例を経験したので報告した.