Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般ポスター
消化器:肝・他

(S658)

尾状葉病変の超音波描出能の検討

Better observation of liver tumors on caudate lobe

幕田 倫子1, 斉藤 沙織1, 渡部 里美1, 石田 秀明2, 長沼 裕子3, 大山 葉子4, 渡部 多佳子2

Michiko MAKUTA1, Saori SAITOU1, Satomi WATANABE1, Hideaki ISHIDA2, Hiroko NAGANUMA3, Yoko OHYAMA4, Takako WATANABE2

1大原綜合病院臨床検査科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3市立横手病院消化器科, 4秋田組合総合病院臨床検査科

1Clinical Laboratory, Ohara General Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 4Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital

キーワード :

【はじめに】
尾状葉は 下大静脈に巻き付く形で門脈の左右枝の後方に位置し,比較的深部にあり,またその前方(腹側)を静脈索で覆われているなど,他の区域以上に観察に苦慮する箇所である.今回我々は,超音波による尾状葉病変の描出能を検討し若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】
尾状葉をRex-Cantlie線で左右に分け,左側をSpiegel葉(以下Spi),右側(下大静脈部+突起部)をS9とした.尾状葉病変18例(HCC:4例,転移:5例,血管腫:2例,嚢胞:5例,膿瘍:2例)を対象に左側(Spi):12例,右側(S9):6例に分け,心窩部横走査,同縦走査,右肋間横走査の描出能,描出病変の鮮明度を検討した.使用装置は GE社製Logiq E9,東芝製Aplio XG,Aplio 500,日立社製Preirus,コンベックスプローブ(いずれも中心周波数3-4 MHz).
【結果】
①走査別描出能について:心窩部横走査では,Spi病変は12例中11例が描出良好,S9病変6例中すべてが描出不良であった.心窩部縦走査では,Spi病変12例中すべてが描出良好,S9病変は6例中すべてが描出不良であった.右肋間走査では,Spi病変で描出良好は12例中1例のみ,S9病変は6例中すべてが描出良好であった.②描出された病変の鮮明度について:2通りの走査法で病変が描出可能だったのは心窩部縦走査と横走査のSpi病変11例,走査法による病変の鮮明度を比較した結果,Spi病変11例では同等の鮮明度だったもの11例中2例,横走査よりも縦走査が鮮明だったもの11例中9例であった.
【まとめと考察】
尾状葉観察の難点として,i)腹直筋による屈折の影響で画像がゆがむ,ii)門脈左枝臍部による後方エコーの増強や静脈索による後方エコーの減衰によりエコー輝度が不均一になる,iii)肋間走査では肋骨が観察を妨げる,があげられる.心窩部横走査は,尾状葉病変の解剖学的位置関係を把握することに優れているが,腹直筋による屈折の影響で画像がゆがむという欠点がある.そのためこの走査法では病変を詳細に観察する際に問題が生ずる.我々の検討でも心窩部縦走査の方が同横走査よりも病変の描出が鮮明であった.Spiに病変がある場合,また,尾状葉が屈折の影響でゆがみが強い場合,門脈左枝臍部や静脈索によりエコー輝度が不均一な場合は,心窩部縦走査でも詳細に観察する必要がある.一方,S9病変に関して,心窩部走査は横走査縦走査ともに描出不良であり,心窩部走査ではS9が克服できない.S9病変は,右肋間走査で丁寧に観察する必要がある.このように,尾状葉全体の観察には心窩部横走査,縦走査,右肋間走査を組み合わせて観察することが必要である.
【参考文献】
Takayama T, Tanaka T, Higaki T, et al. High dorsal resection of the liver. J Am Coll Surg. 179; 72-75, 1994.